赤坂国際会計事務所

GS香港のClaude利用制限とAIガバナンスの新潮流|2026年最新の地政学リスク

2026.04.29UP!

  • blog
  • AIガバナンス
  • AI規制
  • Anthropic
  • Claude
  • ゴールドマン・サックス
  • コンプライアンス
  • 地政学リスク
  • 輸出管理
  • 香港

この記事の要約:この記事では、ゴールドマン・サックスが香港拠点でAnthropicのAIモデル「Claude」の利用を制限した事案を解説します。この措置は単なる技術的トラブルではなく、米中対立を背景としたAIベンダーの地政学的ポリシーと、グローバル金融機関の厳格なAIガバナンスが交差する最新事例です。日本企業が今後直面する「資本構成に基づくAI利用制限」のリスクと対策について詳述します。

ゴールドマン香港のClaude利用禁止から学ぶ、AIガバナンスの新潮流

なぜゴールドマン・サックスは香港拠点でClaudeの利用を制限したのか?

ゴールドマン・サックス(GS)は、Anthropicとの契約解釈および同社の「対中ポリシー」を厳格に適用し、地政学的リスクを最小化するために香港での利用を自主的に遮断しました。これは、Anthropicが2025年に公表した「中国等の非サポート地域、および中国企業が50%超支配するグローバル子会社への提供制限」ポリシーと整合させるための防御的なリーガル判断です。

今回の事案を単一企業のニュースとしてではなく、AIベンダーが「IPアドレス」ではなく「支配構造・法域リスク」に基づいて制限をかける、新しいフェーズへの移行であると見ています。

事実関係:Anthropicの対中ポリシーとGSの判断

 

  • GSの措置: 数週間前から香港拠点のバンカーによるClaudeへのアクセスを停止。社内AIプラットフォーム経由のアクセスも含む。
  • 制限のトリガー: Anthropic側との契約解釈をめぐる協議の結果、GS法務が「グレーなら切る」という保守的な判断を下した。
  • 他モデルとの比較: OpenAI等の他社モデルについては同様の制限はかかっておらず、Anthropic特有の契約条項が背景にある。
  • 本社の動向: 米国本社ではAnthropicと緊密に提携し、KYC(本人確認)やコンプライアンス業務へのAIエージェント導入を推進中。

AIガバナンスの定義:ジオブロックから「支配構造ベース」の制限へ

これまで、AIの利用制限といえばIPアドレスに基づく「ジオブロック」が主流でしたが、今後は以下の概念の理解が不可欠です。

【AIガバナンスにおける支配構造制限とは】
ユーザーが所在する物理的な場所だけでなく、その企業の親会社の国籍や資本構成(50%超の支配権など)に基づいて、AIモデルの利用可否を判定・管理する仕組みを指します。

日本企業への示唆:M&Aや海外拠点管理で弁護士を入れるべきタイミングは?

本記事で後押ししたい判断軸は、「自社の拠点所在地や資本構成が、将来的に主要AIモデルの利用制限を受けないか」を早期に精査することです。特に以下のケースでは早期のリーガルレビューが不可欠です。

  1. 中国・香港に重要なオペレーション拠点を持つ場合。
  2. 中国系資本が一定割合入っているスタートアップやJV(ジョイントベンチャー)。
  3. グローバル共通で同一のAIプラットフォームを導入しようとしている場合。

よくある質問(Q&A)

Q:なぜOpenAIは使えてClaudeだけが制限されたのですか?
A:Anthropic社は国家安全保障や輸出管理に対して非常に保守的なポリシーを掲げており、香港を「非サポート地域」と明確に定義しているほか、契約上のエンティティ制限が他社より厳格であるためと推察されます。

Q:香港以外の拠点(シンガポールなど)への影響は?
A:現時点では香港がターゲットですが、米中対立の激化により、いわゆる「中立的リレー拠点」におけるリスク評価は今後高まる可能性があります。

Q:日本国内の企業であれば安心ですか?
A:日本国内であっても、親会社が制限対象国にある場合や、データの保存先が国外にまたがる場合は、各AIベンダーの最新のToS(利用規約)に抵触する恐れがあります。

著者情報

赤坂国際法律会計事務所

弁護士 角田進二(Shinji SUMIDA)

ご相談はこちらから