赤坂国際会計事務所

2026年米Affiliates Rule復活への実務対応|50%ルールの要点解説

2026.03.16UP!

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この記事では、2026年に向けた米国BISによる「Affiliates Rule(50%ルール)」の施行猶予、およびEntity List(エンティティ・リスト)に関する最新の実務対応について解説。複雑化する輸出管理リスクに対し、日本企業が今準備すべきデューデリジェンスの要点を整理

米国輸出管理「Affiliates Rule(50%ルール)」とは何か
―制度の全体像と日本企業への影響―

はじめに――「停止」は猶予であって撤回ではない

2025年11月、米国商務省産業安全保障局(BIS)は「Affiliates Rule(関係会社ルール)」の施行を1年間停止すると発表した。 この発表を受け、日本企業の輸出管理担当者の間では「当面は様子見でよい」という見方も広がっている可能性もある。

しかし、その理解は正確ではない。

BISは停止の告示において、この期間を「企業がownership(所有構造)の可視化やシステム整備を進めるための猶予」と説明している。 ルール自体は法令として存続しており、停止は2026年11月9日までで、その後特段の延長がなければ2026年11月10日以降、自動的に再適用される。 つまり停止は撤回ではなく、準備期間への転換に過ぎない。

Affiliates Ruleが企業に突きつけている問いは単純だ。

「取引相手を知っているか」ではなく、
「その取引相手を誰が所有しているかを把握しているか」
という点である。

従来の統合スクリーニングリスト(CSL)照合では、この問いに答えることはできない。BIS自身もIFRやFAQで、Affiliates Ruleの導入によりCSLが網羅的なリストではなくなることを明示している。

1 Affiliates Ruleの制度構造

Affiliates Ruleは、リスト掲載企業の「所有関係」まで規制対象を拡張する制度である。

前提となるのは、BISが管理する以下のリストである。

  • Entity List(EL)

  • Military End-User List(MEU)

  • 一部のSDN

これらのリスト掲載企業(covered lists)が外国企業を50%以上所有する場合、その企業(covered affiliate)も親会社と同等の輸出規制を受ける。

つまり

親会社(EL掲載)

子会社

孫会社

という所有連鎖全体が規制対象になる。

この制度は、EL掲載企業が海外子会社やSPVを通じて規制を回避することを防ぐ目的で導入された。 典型的な回避構造は以下のようなものである。

中国企業(EL)

香港子会社

ケイマンSPV

シンガポール企業

日本企業と取引

従来の名前照合では香港やシンガポールの法人はCSLにヒットしないが、Affiliates Ruleではこれらも規制対象となる。

2 制度の4つの核心

Affiliates Ruleには4つの重要な特徴がある。

① 所有権の合算
所有割合は「直接・間接・個別・合算」で計算される。
例:

  • Entity List企業 25%

  • MEU企業 25%

合計50% → 規制対象。

異なるリスト間(EL+MEU+§744.8 SDN)での合算は、BIS独自の設計である。

② 所有連鎖(カスケード)
A社(EL)→B社50%
B社→C社50%

この場合、C社も規制対象になる。

③ 最厳格ルール
複数のリスト企業が所有する場合、最も厳しい規制が適用される(rule of most restrictiveness)。

④ EAR99への適用
通常ライセンス不要とされるEAR99品目でも、対象企業への輸出はライセンスが必要になる。 また、関連する改正により、Entity List FDPRなどのエンドユーザー範囲に「covered affiliates」が組み込まれており、米国技術を用いた外国製品でも影響を受け得る点に注意が必要である。

3 OFAC 50%ルールとの違い

Affiliates Ruleは、しばしばOFACの50%ルールと比較される。OFACの制度は、SDN企業が50%以上所有する企業を制裁対象とみなすものだ。

項目 OFAC BIS
対象 金融制裁 輸出管理
閾値 合算50% 合算50%
クロスリスト合算 同一制裁体系内 異なるリスト間(EL+MEU+§744.8)
最厳格ルール 明文規定なし 明文化
対象取引 金融・資産取引 物品・ソフトウェア・技術の輸出

特に重要なのは「クロスリスト合算」である。

EL企業25%+MEU企業25% → 合計50% → 規制対象
という計算は、OFACと異なる。

4 Red Flag 29――「知らなかった」は通用しない

Affiliates Rule導入と同時に、BISはSupplement No.3 to Part 732 に Red Flag 29 を追加した。

これは所有構造確認の義務を輸出者に課すものである。輸出者が

  • EL/MEU/§SDNによる所有を知っている

  • または知る理由がある

場合、所有割合を確認する積極的義務(affirmative duty)が発生する。

重要なのは、EARの多くの違反行為が厳格責任(strict liability)で扱われる点だ。 つまり、

「知らなかった」のではなく
「調べなかった」

ことが問題になる。

さらにBISは、significant minority ownership(重要な少数持分)や役員重複、共通住所などもRed Flagとして挙げており、50%未満でも追加調査が必要になる場合がある。

5 日本企業へのリスク

Affiliates Ruleの影響は業種によって異なるが、半導体・半導体製造装置、AI、量子技術などの分野は特に高リスクとみられている。 半導体製造装置企業は、米国技術を使用する製品がForeign Direct Product Rule(FDPR)の対象となり得るため、Affiliates Ruleと組み合わさると影響範囲が広がる。

また仕向地別では、中国・香港・マカオ向け取引が高リスクとされる。これらの地域では、Entity List対象企業の海外子会社や関連会社を経由した迂回輸出リスクが指摘されている。

6 Applied Materials事件の示唆

2026年2月、半導体装置メーカー Applied Materials は、米国商務省BISとの和解により、輸出管理違反で約2.5億ドル(252〜252.5百万ドル)の民事ペナルティを支払うことに合意した

同社は、2020年にEntity Listに追加された中国企業向けに、2021〜2022年にイオン注入装置を一旦韓国子会社に輸出し、その後中国へ再輸出する形で出荷を継続していたとされる。

この事件は、

  • 第三国経由の迂回輸出も違反になること

  • Entity List 掲載後の対応が組織として問われること

を示した先例である。

Affiliates Ruleは、このような迂回構造をさらに広範囲に規制する仕組みだと位置づけられる。

7 企業が今すぐ見直すべき3つ

2026年の制度復活に向け、企業は次の3点を整備する必要があると多くの専門家が指摘している。

① 取引先リスト
顧客・代理店・フォワーダーなど、すべての取引当事者を管理する。従来のCSL照合に加え、Affiliates Ruleを前提に所有構造スクリーニングを行う。

② 所有構造リスト
対象は自社子会社、JV、投資先、主要取引先である。50%未満でも、役員重複・住所・資金関係などを確認し、Red Flag となり得る要素を把握する。

③ EAR品目管理
製品が de minimis やFDPRによりEAR対象になる可能性を確認する。 さらに、輸出経路と取引先属性(Affiliates Rule対象かどうか)を組み合わせて管理する必要がある。

8 デューデリジェンスの3層モデル

次の三層構造のデューデリジェンスモデルを採用・推奨

  • Level 1:CSL等による名称スクリーニング

  • Level 2:所有構造の確認(高リスク国・業種をトリガーに実施)

  • Level 3:複雑案件の詳細調査(ネットワーク・グラフ分析、外部DD等)

この際、最終実質支配者(UBO)や所有ネットワークを可視化するツールの活用も広がっている。

結論

Affiliates Ruleは、輸出管理の考え方を

「企業リスト」から
「資本ネットワーク」

へ転換する制度である。 従来は企業名を確認すればよかったが、今後は「その企業を誰が所有しているか」まで確認する必要がある。

2026年11月の復活まで残された時間は多くない。停止期間は猶予であり、対応を先送りできる期間ではない。 日本企業に求められているのは、所有構造を含む輸出コンプライアンス体制の再設計である。

【自己診断】以下の項目に1つでも該当しませんか?

  • □ 取引先の主要株主が誰か、50%超の資本構成を把握していない
  • □ 中国のJV(合弁企業)相手がEntity Listに関係しているか不明である
  • □ 米国技術を含む製品を、第三国経由で輸出している
  • □ 2026年11月のルール復活に向けた社内規程の改訂が進んでいない

1つでもチェックが入る場合、潜在的な規制違反のリスクがあります。まずは確認だけご相談ください。

著者情報

赤坂国際法律会計事務所

弁護士 角田進二(Shinji SUMIDA)

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