赤坂国際会計事務所

特定募集情報等提供事業とは?届出義務をQ&A解説

2025.10.06UP!

  • blog
  • Webサイト運営
  • 人材サービス
  • 個人情報保護
  • 届出義務
  • 弁護士
  • 求人サイト
  • 法改正
  • 特定募集情報等提供事業
  • 罰則
  • 職業安定法

「自社のWebサイトは特定募集情報等提供事業にあたるのだろうか?」「メールアドレスを収集しているが、届出は必要なのか?」といった疑問をお持ちではありませんか。実は、令和4年の法改正により、求人・求職に関する情報提供事業のルールは大きく変わりました。そこで本記事では、特定募集情報等提供事業の定義から届出義務、罰則、個人情報の取扱いまで、複雑な制度をQ&A形式で分かりやすく解説します。

Q1. 募集情報等提供事業とは何ですか?

「募集情報等提供」とは、【職業安定法】(法第4条第6項)で定められた、主に以下の4つの行為(4類型)を指す事業のことです。

もともと、この事業は求人企業や求職者の依頼に基づいて情報を提供するものとされていました。しかし、令和4年(2022年)の法改正で範囲が拡大され、自ら情報を収集して提供するクローリング型サイトなども対象に含まれるようになりました。さらに詳しくは厚生労働省のページもご参照ください。

類型1号

定義: 労働者の募集を行う者等(求人企業など)の依頼を受け、募集に関する情報(求人情報)を、労働者になろうとする者等に提供します。

具体例: 求人サイト、求人情報誌、求人情報を投稿するSNS。

依頼の有無: あり

類型2号

定義: 労働者になろうとする者の職業選択を助ける目的で、募集に関する情報(求人情報)を自ら収集し、提供します。

具体例: クローリング型求人サイト(アグリゲーター)。

依頼の有無: なし(自ら収集)

類型3号

定義: 労働者になろうとする者等の依頼を受け、その者に関する情報(求職者情報)を、募集を行う者等に提供します。

具体例: 人材データベース、企業が閲覧する前提の求職者登録SNS。

依頼の有無: あり

類型4号

定義: 労働者の募集を行う者の労働力確保を助ける目的で、労働者になろうとする者に関する情報(求職者情報)を自ら収集し、提供します。

具体例: クローリング型人材データベース。

依頼の有無: なし(自ら収集)

募集情報等提供事業者は、雇用関係の成立をあっせんする「職業紹介」は行いません。そのため、職業紹介事業の許可は不要です。ただし、次に説明する「特定募集情報等提供事業」に該当する場合は、行政への届出が必要になります。

Q2. 特定募集情報等提供事業とは何ですか?通常の募集情報等提供事業との違いは?

特定募集情報等提供事業の定義

特定募集情報等提供事業とは、募集情報等提供事業のうち、「労働者になろうとする者に関する情報を収集して行う募集情報等提供」を指します。

ここでいう「労働者になろうとする者に関する情報」には、氏名のような個人情報だけでなく、メールアドレスや経歴、サイトの閲覧履歴等も含まれる点に注意が必要です。

つまり、求職者情報を何らかの形で「収集」する事業であれば、それは特定募集情報等提供事業に該当する可能性が高いと言えます。

通常の募集情報等提供事業(非特定)との違い

特定募集情報等提供事業者に該当すると、届出義務をはじめ、非特定事業者よりも多くの義務や規制が適用されます。

①届出制(事業開始届出)

特定事業者: 義務

非特定事業者: 適用されない。弁護士のコメント:なお、任意に届出を行うことも可能です。
届出を行うことで厚生労働省の届出一覧に掲載され、信頼性向上や将来の制度変更時の対応に資する場合があります。

②事業概況報告書の提出
特定事業者のみ: 義務
③個人情報の取扱い(法5条の5)

特定事業者のみ: 適用される

④労働者からの報酬受領の禁止

特定事業者のみ: 基本的に適用される

⑤秘密を守る義務

特定事業者のみ: 適用される

⑥求人等の的確表示義務

特定事業者: 適用される

非特定事業者: 適用される(共通の義務)

ではなぜ、特定事業者に届出制が導入されたのでしょうか。その背景には、秘匿性の高い個人情報を扱う実態や、リコメンド機能など需給調整への影響力が大きいことから、行政が事業概況を把握する必要があるためです。

Q3. 自社の事業が「募集情報等提供事業」に該当するか判断する基準は?

事業として「業として行っているといえるかどうか」で判断します。「業として行う」とは、すなわち、一定の目的をもって同種の行為を反復継続的に遂行することです。

事業性が認められる例

  • 反復継続の意思があれば、たとえ1回限りの行為でも事業と判断される場合があります。
  • また、営利目的の有無は問いません。
  • 募集情報等提供を行う旨をWebサイトなどで宣伝・広告している場合は、原則として事業性があると判断します。

事業性が認められない例

  • 行為がすべて受動的・偶発的で、反復継続の意思がない場合は、事業性は認められません。

なお、職業紹介事業者が単に自社の紹介求人をサイトに掲載する行為は、職業紹介事業の一環であり、募集情報等提供には該当しません。

Q4. ネット広告で求人が表示される場合、募集情報等提供事業になりますか?

結論から言うと、直ちに募集情報等提供事業に該当するとは限りません。

なぜなら、様々な広告の一つとして求人広告が表示されるだけで、反復継続の意思がない場合は、事業に該当しないと判断されるからです。例えば、一般的な検索サイトが多数の広告の中で求人広告も扱っているケースは該当しません。

一方で、サービス内容が「求人広告に特化」していることを宣伝しているなど、実質的に反復継続の意思があると認められる場合は、募集情報等提供事業と判断される可能性があります。

Q5. メールアドレスを収集して求人情報を配信する場合、特定募集情報等提供事業に該当しますか?

はい、原則として特定募集情報等提供事業に該当します。

その理由は、特定募集情報等提供事業の定義が「労働者になろうとする者に関する情報を収集して行う」ものであり、この情報にはメールアドレスが含まれるためです。

該当するケース

  • メールアドレスを収集し、そのアドレス宛に求人情報のメールマガジンを配信するなど、募集情報の提供に利用している場合。

該当しない例外ケース

  • 収集したメールアドレスを、合同説明会の入場管理のみに使い、求人情報の提供や企業への提供を行っていない場合。
  • 収集した情報が、併営する職業紹介事業にのみ使用され、募集情報等提供の目的で使われていない場合。

求められる対応(届出)

メールアドレスを収集して求人情報を配信する場合、特定募集情報等提供事業者として、厚生労働大臣への届出義務が生じます。もし届出を怠ると、6月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

Q6. 特定募集情報等提供事業を始める場合、いつまでに届出が必要ですか?

事業を開始する前にあらかじめ、厚生労働大臣に届け出る必要があります。届出をしないで特定募集情報等提供事業を行うと、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

Q7. 特定募集情報等提供事業の届出は、どのように行いますか?

届出は、厚生労働省が管轄する「e-Gov電子申請」を利用したオンラインでの手続きが推奨されています。または、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に必要書類を提出することでも可能です。

主な必要書類は以下の通りです。

  • ① 特定募集情報等提供事業届出書(様式第9号の3)
  • ② 定款など
  • ③ 登記事項証明書(法人の場合)

詳細な手続きや様式のダウンロードについては、厚生労働省のウェブサイトをご確認ください。

Q8. 職業紹介事業の許可があれば、特定募集情報等提供事業の届出は不要ですか?

いいえ、原則として届出は必要です

つまり、職業紹介事業の許可を持っていても、別途、特定募集情報等提供事業を行うのであれば、その届出をしなければなりません。

ただし、以下の両方の条件を満たす場合は、職業紹介事業の一環と見なされ、届出は不要です。

  • ① 受理した紹介求人を自社サイトに掲載するなど、あくまで職業紹介のための行為である場合。
  • ② そのサイト上で、求職者が求人企業に求職者が求人者に直接連絡をとることができない場合、またはそのような仕組みを設けていない場合。

Q9. 派遣元事業主が派遣求人サイトを運営する場合、届出は必要ですか?

原則として、届出は不要です。

派遣元事業主が自社の派遣求人をサイトに掲載する行為は、自社で雇用する派遣労働者の募集活動の一環にすぎません。そのため、募集情報等提供事業には該当せず、届出も不要です。

しかし、他社の求人情報も扱うなど、自社の派遣労働者募集以外の目的で事業を行う場合は、届出が必要になるケースがあります。

Q10. 届出事項に変更があった場合、変更届は必要ですか?

はい、変更届が必要です。

届出事項に変更があったときは、変更日の翌日から30日以内に届け出なければなりません。

変更届が必要な主な事項

  1. 氏名または名称
  2. 住所(所在地)
  3. 法人代表者氏名
  4. 電話番号
  5. 職業紹介事業または労働者派遣事業の許可番号 等

変更届が不要な事項

  • 提供するサービスの名称やサイトURL
  • 担当者の氏名や連絡先

変更届を怠ったり、虚偽の届出をしたりすると、30万円以下の罰金の対象となる場合があります。


的確表示義務について(法第5条の4関係)

Q11. 「虚偽の表示」に該当するのはどのような場合ですか?

事実と異なる内容を意図的に表示することです。例えば、以下のようなケースが該当します。

  • 実際には採用予定のない「カラ求人」を掲載する。
  • 基本給20万円と表示しつつ、実際はそれより低い金額を予定している。
  • 全く根拠なく「顧客満足度No.1」などと表示する。

Q12. 「誤解を生じさせる表示」とは具体的にどのようなものですか?

虚偽ではなくても、客観的に見て利用者が誤解するような表示を指します。

  • 営業職が中心の業務を「事務職」と募集する。
  • 契約社員の募集なのに「試用期間中は契約社員」と書き、正社員募集であるかのように見せかける。
  • 「モデル収入例」である旨を記載せず、最低保障給のように表示する。

Q13. 固定残業代の表示で注意すべき点は?

固定残業代(みなし残業代)を給与に含める場合、そして、その内訳を明確に表示しなければなりません。

必ず明示すべき3つの事項

  1. ① 固定残業代を除いた基本給の額
  2. ② 固定残業代の金額と、それが何時間分にあたるのか
  3. ③ 固定残業時間を超過した分は追加で支払う

例として、「月給32万円(【基本給】25万円【固定残業代】7万円/15時間分 ※超過分は別途支給)」のように、内訳をはっきりと分ける必要があります。

Q14. 「モデル収入例」や「月給○万円~○万円」といった表示は許容されますか?

はい、これらの表示自体は問題ありません

ただし、誤解を招くような使い方は禁止です。例えば、社内で最も給与が高い社員の例を、誰もがその額をもらえるかのように「モデル収入例」として示すことは、誤解を生じさせる表示に該当します。

Q15. 求人情報が古くなった場合、どのように対応すべきですか?

事業者は、情報を正確かつ最新に保つための措置を講じる義務があります。

① 全事業者が共通で行うべき措置

  • 求人企業などから情報の訂正や提供中止を求められたら、遅滞なく対応する。
  • 情報が不正確だと判明したら、依頼者に訂正を確認するか、提供を中止する。

② 事業類型に応じた追加措置

  • 依頼を受けて情報を掲載する場合(1号・3号事業者)は、依頼者に「変更があれば速やかに通知してください」と依頼するか、情報の時点(例:〇月〇日時点の情報)を明記します。
  • 一方、自ら情報を収集する場合(2号・4号事業者)は、情報を定期的に更新してその頻度を明記するか、情報を収集した時点を明記します。

Q16. 求人メディアとして、求人企業から掲載中止の依頼があった場合の対応は?

遅滞なく、つまり合理的な期間内に、情報の提供を中止または訂正しなければなりません。例えば、サイトの次回更新時までに対応するなど、可能な限り早く対応する必要があります。もし正当な理由なく放置した場合は義務違反となります。

Q17. 紙媒体の求人誌の場合、掲載中止の依頼にどう対応すれば良いですか?

一度発行した求人誌を回収する必要はありません

その代わり、定期的に発行する媒体であれば、次号を発行するタイミングで情報を更新すれば問題ありません。


個人情報の取扱いについて(法第5条の5関係)

特定募集情報等提供事業者は、求職者等の個人情報を収集・保管・使用するにあたり、業務の目的達成に必要な範囲内で行わなければなりません。さらに、その目的を本人に明示する必要があります。

Q18. 「業務の目的の達成に必要な範囲」とはどこまでを指しますか?

業務の遂行に必要と判断される範囲のことです。

範囲内に含まれる例

  • 収集した職歴情報をもとに、求職者の属性に合ったサービスを提供する。
  • 収集した個人情報を、サービス向上のために匿名化して統計処理する。

範囲に含まれない例

  • 募集情報提供のために収集した個人情報を、本人の同意なく、併営する職業紹介事業のために求人企業へ提供する。
  • 自社の採用選考のために、収集した個人情報を流用する。

複数のサービスを運営していても、あるサービスで集めた個人情報を、本人の同意なく別のサービスに流用することは原則として禁止です。

Q19. 個人情報の収集目的はどの程度具体的に明示すればよいですか?

求職者が一般的かつ合理的に想定できる程度に、具体的に示す必要があります。

十分な明示の例

  • 「求人情報に関するメールマガジンを配信するために利用します」
  • 「会員登録時に入力いただいた情報を、当社のサービスに登録している企業に提供します」

Q20. 「募集情報等提供のために使用します」という表示で十分ですか?

いいえ、不十分です

なぜなら、このような漠然とした表現では、利用者が具体的にどう使われるか予測できないため、目的を明示したことにはなりません。「会員登録時に入力いただいた情報を、希望した条件に合致する企業に提供するため」と示すなど工夫をすべきです。

Q21. 業務目的を超えて個人情報を利用する場合の同意取得の注意点は?

目的外利用のために本人の同意を得る場合、以下の3点を遵守する必要があります。

  1. ① 同意を求める事項を具体的かつ詳細に明示すること。
  2. ② 本人が自由な意思で明確に同意の意思表示をすること。
  3. ③ 目的外利用への同意を、サービス利用の条件にしないこと。

特に③が重要で、「この目的に同意しないとサービスを使わせない」という対応は禁止されています。

Q22. 利用規約を示してサービス利用を開始させることで同意取得とできますか?

単に利用規約を示し、利用を開始しただけでは、明確な同意があったとは言えません。

そのため、同意を取得する方法としては、利用規約を示した上で、チェックボックスへのチェックや「同意する」ボタンのクリックを求める方法が認められています。もちろん、トラブル防止の観点からは、書面やメールなど、後から同意の事実を確認できる形が望ましいです。

Q23. 利用規約を変更する場合、既存ユーザーの同意取得はどうすればよいですか?

新規の同意取得と同様に、本人の自由な意思に基づき、明確に同意の意思表示をしてもらう必要があります。

その際、以下の点に配慮することが望ましいとされています。

  • 十分な周知期間を設ける。
  • 同意しない場合の選択肢(サービスの利用中止など)を示す。
  • 求職者に不利益が生じないように配慮する。

職業紹介との区分について

Q24. 職業紹介と募集情報等提供の違いは何ですか?

最大の違いは「雇用関係の成立をあっせんするかどうか」です。

  • 職業紹介: 求人者と求職者の間に立ち、面接の日程調整や条件交渉を行うなど、雇用契約の成立をあっせんします。このため、中間搾取などの弊害を防ぐ目的で、厳しい規制のある許可制の事業です。
  • 募集情報等提供: 一方、こちらは求人・求職に関する情報を提供するだけで、あっせんは行いません。したがって許可は不要ですが、特定事業者の場合は届出制となります。

Q25. 職業紹介事業者が求人をサイトに掲載する場合、募集情報等提供に該当しますか?

単に紹介求人をサイトに掲載するだけであれば、職業紹介事業の一環であり、募集情報等提供には該当しません

しかし、そのサイト上で求職者が求人企業と直接連絡がとれるようにするなど、別途情報提供を事業として行っていると認められる場合は、募集情報等提供事業に該当し、届出が必要になる可能性があります。

Q26. 「リコメンド機能」は職業紹介に該当しますか?

リコメンド機能が職業紹介の「あっせん」に該当するかは、事業者の判断がどれだけ介在しているかによって決まります。

具体的には、以下の行為は、事業者の判断が強く介在していると見なされ、職業紹介に該当する可能性があります。

  1. ① 事業者の判断で選別した情報のみを提供する(利用者が他の情報を検索できない)。
  2. ② 事業者の判断で、提供相手に応じて情報を加工して提供する。
  3. ③ 求人者と求職者のメッセージを仲介する際、事業者の判断でその内容を加工する。

職業紹介にあたるリコメンドの具体例

一方で、すべてのリコメンドが職業紹介に該当するわけではありません。以下に具体例を示します。

職業紹介に該当しないリコメンドの例

  • サイト上では全件検索を可能にした上で、一部の求人を「おすすめ」として配信する行為。

職業紹介に該当すると考えられるリコメンドの例

  • 原則非公開の求人を、事業者が「この人に合う」と判断した求職者にのみ個別に紹介する行為。

[専門家の解説]
職業紹介と募集情報等提供の境界線は非常に重要です。特にAIを活用したリコメンド機能では、アルゴリズムが実質的に「事業者の判断による選別」を行っていると解釈されるリスクがあります。したがって、自社のサービスが、利用者に情報の全体像を提示した上で便宜を図っているのか、それとも事業者が主体的にマッチングを行っているのか、客観的な整理が不可欠です。

Q27. 「事業者の判断により選別」とは具体的にどのような行為ですか?

事業に従事するが行うか、コンピュータやアルゴリズムが自動で行うかを問いません。

例えば、求職者が登録した情報をもとに、事業者が選別した求人情報のみを提供し、求職者がそれ以外の情報を得られないような仕組みは、「事業者の判断による選別」に該当します。

Q28. 求人企業の依頼に基づいて特定の求職者にのみ情報提供する場合は?

求人企業の具体的な依頼に沿って情報提供の対象を絞る場合は、「事業者の判断」には該当しません(職業紹介にはあたりません)。

例を挙げると、「看護師資格を持つ人にだけ募集情報を送ってほしい」という企業の依頼に基づき配信する行為は、事業者の判断ではなく、依頼主の指示に従ったものと解釈されます。

Q29. 会員登録制のサービスで情報提供を制限する場合、職業紹介に該当しますか?

該当しませんただし、以下の2つの条件を満たす必要があります。

  1. ① 利用者が、会員区分によって提供される情報が違うことをあらかじめ認識していること。
  2. ② 利用者が、自分の意思で会員区分を変更できること。

Q30. 「求人者又は求職者に応じて加工し、提供」とはどのような行為ですか?

個別の相手に応じてオーダーメードで情報を加工することを指します。

例えば、求職者の職歴を見て「あなたの経歴なら月額〇〇万円も可能です」といった独自のメッセージを付けて情報提供する場合や、応募する企業に合わせて履歴書を改変・追記するような場合が該当します。

Q31. 求人情報に「新着」マークを付ける行為は「加工」に該当しますか?

該当しませんなぜなら、これは全ての利用者に対して一律に行う表示であり、個別の相手に応じたオーダーメードの加工ではないためです。

Q32. 閲覧履歴に基づいて表示順を変更する行為は職業紹介に該当しますか?

該当しません。情報の内容自体を加工するわけではなく、あくまで表示の順番を変えているにすぎないため、「加工」や「選別」にはあたらないと解釈されます。

Q33. 「意思疎通の加工」とは何ですか?

求職者と求人者のメッセージを事業者が仲介する場合に、事業者の判断でその内容に手を加えることです。

具体的には、メールの内容を追記・改変・削除したり、採用可能性が高いと思われる応募者の連絡を意図的に早く届けたりする行為が該当します。

Q34. メッセージ機能を提供するだけで職業紹介に該当しますか?

該当しません。単にコミュニケーションの場(ツール)を提供しているだけでは、「意思疎通の加工」にはあたらないからです。

Q35. 履歴書の書き方についてアドバイスする行為は「意思疎通の加工」ですか?

一般的な書き方のアドバイスであれば、該当しませんしかし、事業者が自ら履歴書の内容を改変し、それがそのまま企業に提出されるような場合は「加工」に該当する可能性があります。


報酬受領の禁止について(法第43条の3関係)

Q36. 求職者から一切の料金を受け取ることが禁止されるのですか?

いいえ、一切の料金が禁止されるわけではありません

なぜなら、この規制は、あくまで募集に応募した労働者からの報酬を禁止するもので、対象は特定募集情報等提供事業者のみだからです。

Q37. システム利用料や登録料として料金を徴収することは可能ですか?

応募とは無関係に、一律のシステム利用料や登録料を徴収すること自体は、直ちに禁止されるものではありません

しかし、名称が利用料でも、実質的に「応募1件につき〇円」のように、応募の対価として労働者から報酬を得ていると判断される場合は、この規定に違反します。また、転職成功をうたって数十万円といった高額な料金を徴収する場合も、実質的に応募の対価と見なされるリスクがあります。


その他の義務について

Q38. 事業情報の公開は義務ですか?どのような情報を公開する必要がありますか?

事業情報の公開は、努力義務です。そのため、利用者が適切な事業者を選べるよう、以下の情報の公開に努めることが求められています。

  1. ① 求人等の的確な表示に関する事項
  2. ② 個人情報の保護のために講じている措置
  3. ③ 苦情の処理に関する事項
  4. ④ 求人情報等の検索結果の表示順を決定する上で考慮している主要な事項

特に④については、有料掲載の有無やサイト閲覧履歴などが表示順に影響するかどうか、利用者に分かるように示す必要があります。

Q39. 表示順位を決定するアルゴリズムの詳細も公開する必要がありますか?

いいえ、アルゴリズムの詳細まで公開する必要はありません

公開が求められるのは、「有料掲載の有無」「閲覧履歴」「登録された職歴」といった、表示順の決定に用いる主要な事項です。したがって、具体的な計算手順などを示す必要はありません。

Q40. 苦情処理体制として具体的にどのような対応が必要ですか?

求人企業や求職者からの苦情を適切かつ迅速に処理するため、必要な体制を整備する義務があります。

  1. ① 相談窓口の明確化と周知
    電話番号やメール、問い合わせフォームといった苦情の申出先を明確にし、利用者に分かりやすく周知する必要があります。必ずしも専任の職員を置く必要はありませんが、担当者を選任するなど、事業規模に応じた体制整備が望ましいです。
  2. ② 苦情の適切かつ迅速な処理
    苦情を放置することは義務違反となります。例えば、情報内容の誤りについて苦情があれば、遅滞なく事実確認や訂正、掲載中止といった対応が必要です。必要に応じて、職業安定機関(労働局など)と連携することも求められます。

Q41. 法違反があった場合、すぐに行政処分を受けるのですか?

いいえ、直ちに改善命令などの重い処分が下されるわけではありません。行政の対応は、通常、以下の段階を踏みます。

  1. 指導および助言: まずは行政からの助言や指導が行われます。
  2. 報告徴収および立入検査: 必要に応じて、報告を求められたり、立入検査が行われたりします。
  3. 改善命令: 指導に従わず、違反状態が是正されない場合に改善命令が出されます。
  4. 事業停止命令: 特定事業者が個人情報保護義務や改善命令に違反するなど、重大なケースにおいて事業の停止が命じられます。

ただし、無届出での事業運営や事業停止命令違反など、特に悪質な行為には、指導等を介さず直接罰則(刑事罰)が適用される場合があります。


著者情報

赤坂国際法律会計事務所
弁護士 角田進二

ご相談はこちらから