フランス:「有給休暇中の病欠日は再取得可能に──2025年破棄院判決とEU法整合化」
2025.09.15UP!
背景と従来のフランス法上の扱い
これまでのフランス国内の裁判例
労働者が有給休暇中に病気になっても、その期間は休暇として消化されたものとみなされ、後日取り直すことはできませんでした。
病気による就労不能は、原則として有給休暇の進行を停止させるものではないとされていました。
ただし、労働協約などで特別に認められている場合は例外でした。
EU司法裁判所(CJUE)の立場(2009年以降の判例)
有給休暇の目的は、労働者が十分に休養・余暇をとることにあります。
休暇中に病気となった場合、労働者は休養が実質的に享受できなかったと考えられます。
したがって、病気と重なった有給休暇は後日取得できるべきという判断を繰り返し示していました(例:2009年 Schultz-Hoff 判決など)。
2024年4月22日公布のDDADUE法
この法律は、病気休職中にも有給休暇が発生・蓄積し、後日取得できることを明文化しました。
これは、フランス法をEU法に適合させる目的で導入されたものでした。
⚖️ 2025年9月10日 破棄院判決の意義
新たに示された原則
破棄院は、休暇中に病気となった労働者は、その期間に重なった有給休暇日数を後日取得できると判断しました。
これは従来のフランス国内判例を大きく転換するものです。
判決の論拠
有給休暇の目的は「休息と余暇」であり、
病気休暇の目的は「療養・回復」であるため、性質が異なる。
よって、病気になった期間を有給休暇とみなすことは、労働者の休養権を侵害するとされました。
実務上の結果
労働者は、病気と重なった有給休暇を後日取り直すことができるようになります。
労働者は医師の診断書などで病気を証明する必要があります。
企業側はその日数を休暇残数に戻し、再取得を認める義務を負います。
📌 実務・制度上の含意
企業側にとって
勤怠・給与管理システムの変更:病気と重なった休暇日を再付与する仕組みが必要
不正防止のための手続整備:海外での休暇中病欠などの確認方法を設ける
拒否した場合の訴訟リスク:不当な拒否は労働紛争につながるおそれ
労働者にとって
EU基準に沿った権利保障が確立
健康と休養の両立が可能に
ただし、病気発生時に速やかな申告と証明書提出が必要
https://www.service-public.fr/particuliers/actualites/A18453?xtor=EPR-100