赤坂国際会計事務所

必読:商務部公告2025年第61号:対外関連レアアース物項への輸出管理実施に関する決定の公布2 附件1:物項リスト

2025.10.27UP!

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中国商務部公告61号(レアアース輸出管理)が施行。特に「0.1%ルール」と「域外適用」は、日本の半導体・自動車・工作機械メーカーのサプライチェーンに致命的な影響を与えます。対応期限(12月1日)は目前です。

第一部分:基礎材料(原材料レベル)

重希土類元素(HREE:Heavy Rare Earth Elements)

これらは「重レアアース」と呼ばれ、地球上で最も希少で代替困難な元素群です:

元素 主要用途 世界供給における中国シェア
ジスプロシウム(Dy) 高温耐性永久磁石、EVモーター 約90%
テルビウム(Tb) 磁歪材料、グリーンLED蛍光体 約95%
ガドリニウム(Gd) MRI造影剤、磁気冷却 約85%
サマリウム(Sm) SmCo磁石(耐熱性最高) 約80%

合金・酸化物

  • サマリウム-コバルト合金:航空宇宙・軍事用(250℃でも磁力維持)
  • テルビウム-鉄合金、ジスプロシウム-鉄合金:ネオジム磁石の耐熱性向上添加剤
  • 酸化ジスプロシウム・テルビウム:合金製造の中間原料

第二部分:最終製品・部品レベル

一、永久磁石(世界最強の磁石)

1. サマリウム-コバルト(SmCo)磁石

  • 特徴:250℃まで耐熱、腐食に強い
  • 用途
    • 軍事:ミサイル誘導システム、戦闘機エンジン
    • 航空宇宙:人工衛星、宇宙探査機
    • 産業:深海油田掘削機、原子力発電所ポンプ

2-3. ネオジム-鉄-ボロン(NdFeB)磁石(テルビウム・ジスプロシウム添加)

  • 特徴:世界最強の永久磁石だが、高温で磁力低下 → Tb/Dy添加で改善
  • 用途
    • 自動車:EVモーター(
    • 風力発電:ダイレクトドライブ式風力タービン
    • エレクトロニクス:HDDスピンドルモーター、スマートフォン振動モーター
    • 産業ロボット:サーボモーター

4. 部品・部材・組立品

  • 対象範囲:上記磁石をわずかでも含む全ての製品
    • 自動車部品:パワーステアリングモーター、ブレーキシステム
    • 家電:エアコンコンプレッサー、冷蔵庫モーター
    • 医療機器:MRI装置
    • ロボット:関節駆動モーター

二、スパッタリングターゲット材料(半導体製造の心臓部)

スパッタリングとは:真空中でターゲット材料にイオンを衝突させ、原子を飛ばして基板上に薄膜を形成する技術(半導体製造の基本工程)

規制対象の7種類のターゲット材料

ターゲット材料 主要用途 日本企業への影響
1. サマリウム系 磁気記録材料、MRAM 東京エレクトロン、SCREEN
2. ガドリニウム系 光磁気ディスク、X線検出器 JX金属、田中貴金属工業
3. テルビウム系 磁気光学材料、グリーンLED 住友金属鉱山、三井金属
4. ジスプロシウム系 磁気記録材料 日鉱金属、同和鉱業
5. ルテチウム シンチレータ(放射線検出器) 医療機器メーカー全般
6. スカンジウム 高強度アルミ合金(航空機) 神戸製鋼所、UACJ
7. イットリウム系 酸化物半導体、LED蛍光体 日亜化学、豊田合成

【0.1%ルールの破壊力】

具体例:半導体製造装置

ケース1:スパッタリング装置

  • 使用するイットリウム-アルミニウム合金ターゲット:5,000ドル(0.1%)
  • 結果:この装置を韓国・台湾に輸出する際、日本の会社は中国政府の許可が必要

ケース2:ロボット

  • 使用する中国製Dy添加NdFeB磁石(サーボモーター内):100ユーロ(0.1%)
  • 結果:このロボットを米国に輸出する際、ある会社は中国政府の許可が必要

ケース3:EV

  • 使用する中国製モーター用永久磁石:50ドル(0.1%)
  • 結果:この車を欧州に輸出する際、ある会社は中国政府の許可が必要

【日本産業界への戦略的示唆】

即座の影響(2025年12月1日〜)

  1. 半導体製造装置メーカー
    • 全てのスパッタリング装置が規制対象
    • 納期が45営業日以上延長される可能性
    • 対策:非中国産ターゲット材料への切り替え(日本、米国、韓国製)
  2. 自動車産業
    • 全てのEV、HEVが規制対象(モーター用磁石)
  3. 産業機械・ロボット
    • サーボモーター使用製品全般が規制対象
    • 対策:フェライト磁石など代替材料の採用(性能10-15%低下)

Q1: 中国「公告61号」の何が問題なのですか? A1: 12/1施行のレアアース輸出規制です。問題は、対象のレアアースを0.1%でも含む製品の輸出(日本から他国への輸出も含む**「域外適用」**)に中国政府の許可が必要になる点です。これにより半導体・自動車等のサプライチェーンが寸断されるリスクがあります。

Q2: 「0.1%ルール」とは具体的に何ですか? A2: 製品価格の0.1%でも対象レアアース(Dy, Tb等)を含む場合、規制対象となる可能性を示します。例えば、ロボットに使う1万円のモーター内の10円の中国製磁石が対象となり、ロボット全体の輸出が許可制になる、という深刻な事態が想定されます。

Q3: 規制対象となる主な製品は何ですか? A3: 重レアアース元素そのものに加え、EVモーターやロボットに使われる「永久磁石(ネオジム磁石等)」や、半導体製造装置に使われる「スパッタリングターゲット材料」が指定されています。これらを含む自動車部品や産業機械も対象です。

Q4: 期限(12月1日)までに何をすべきですか? A4: まず自社製品のサプライチェーンを精査し、規制対象のレアアース(特にDy, Tb)や部品(磁石, ターゲット)が0.1%以上含まれていないか(調達先含む)を特定することが急務です。該当する場合は、非中国産材料への切り替えや代替材料の採用を直ちに検討する必要があります。

 

附件1:物項リスト(雑訳)

第一部分(第一部)

  • 金属サマリウム(Sm)
  • 金属ジスプロシウム(Dy)
  • 金属ガドリニウム(Gd)
  • 金属テルビウム(Tb)
  • 金属ルテチウム(Lu)
  • 金属スカンジウム(Sc)
  • 金属イットリウム(Y)
  • サマリウム-コバルト合金
  • テルビウム-鉄合金
  • ジスプロシウム-鉄合金
  • テルビウム-ジスプロシウム-鉄合金
  • 酸化ジスプロシウム
  • 酸化テルビウム

第二部分(第二部)

一、レアアース永久磁石材料

  1. サマリウム-コバルト永久磁石材料
  2. テルビウムを含むネオジム-鉄-ボロン永久磁石材料
  3. ジスプロシウムを含むネオジム-鉄-ボロン永久磁石材料
  4. 上記材料を含む部品、部材、組立品

二、レアアーススパッタリングターゲット材料

1. サマリウムを含むターゲット材料:

  • a. サマリウムターゲット
  • b. サマリウム-コバルト合金ターゲット
  • c. サマリウム-鉄合金ターゲット

2. ガドリニウムを含むターゲット材料:

  • a. ガドリニウムターゲット
  • b. ガドリニウム-鉄合金ターゲット
  • c. ガドリニウム-コバルト合金ターゲット

3. テルビウムを含むターゲット材料:

  • a. テルビウムターゲット
  • b. テルビウム-コバルト合金ターゲット
  • c. テルビウム-ジスプロシウム-鉄合金ターゲット

4. ジスプロシウムを含むターゲット材料:

  • a. ジスプロシウムターゲット
  • b. テルビウム-ジスプロシウム-鉄合金ターゲット

5. ルテチウムターゲット

6. スカンジウムターゲット

7. イットリウムを含むターゲット材料:

  • a. イットリウムターゲット
  • b. イットリウム-アルミニウム合金ターゲット
  • c. イットリウム-ジルコニウム合金ターゲット

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