経済産業省関係 令和7年度補正予算案の概要
2025.12.01UP!
- blog
- 令和7年 補正予算案 補助金


2025年(令和7年)、経済産業省の補正予算案が公表されました。その総額は2.7兆円。物価高対策からAI・半導体への巨額投資まで、日本経済の「危機管理」と「成長」を両立させるための大型予算が組まれています。
しかし、経営者の皆様にとって重要なのは「総額」ではありません。「自社のビジネスにどのような補助金が使えるのか?」「新たに発生する法的義務は何か?」という点ではないでしょうか。
本記事では、令和7年度補正予算案を分析。複雑な政策文書を読み解き、企業が今すぐ取るべきアクションを解説します。
この記事の結論(30秒で把握)
- 物価高・賃上げ対策:省力化投資に最大規模の予算。中小企業の「生産性向上」が最優先課題に。
- 経済安全保障:サプライチェーン強靱化が「義務」へ。製造業は調達ルートの見直しが必須。
- GX・AI投資:脱炭素とデジタル分野に巨額の官民投資。ここが最大の成長市場。
1. 【総論】経済産業省令和7年度補正予算案の全体像
今回の補正予算案は、石破内閣の「総合経済対策」を具体化したものであり、以下の3本柱で構成されています。
- 第一の柱:生活の安全保障・物価高への対応(1兆3,570億円)
- 第二の柱:危機管理投資・成長投資による強い経済の実現(1兆1,634億円)
- 第三の柱:防衛力と外交力の強化(2,082億円)
特筆すべきは、従来の「コストカット型」から、有事を想定した「危機管理投資」へと舵を切った点です。これは企業に対し、平時からサプライチェーンやサイバーセキュリティへの投資を強く求めるメッセージと言えます。
2. 企業活動へ直接影響する法制度と予算措置
ここでは、企業の法務・コンプライアンス担当者や経営企画部門が押さえておくべき変更点を解説します。
2.1 経済安全保障とサプライチェーン(製造業・物流業)
経済安全保障推進法に基づき、特定重要物資の指定が拡大されます。これに伴い、関連企業には新たな供給安定化義務が課される可能性があります。
サプライチェーン強靱化義務の拡大
予算規模:466億円(経済安全保障サプライチェーン強靱化事業)
対象物資:無人航空機、永久磁石、ロケット部品、人工衛星、磁気センサー等
企業への影響:
- 生産拠点の多様化(脱・特定国依存)
- トレーサビリティシステムの構築義務
サイバーセキュリティ対策の法制化
予算規模:57億円
背景:2025年7月施行予定の「サイバー対処能力強化法」
企業への影響:
- 基幹インフラ事業者への基準適合義務
- 医療分野などが新たに対象に追加される見込み
- システム監査および専門人材の確保が急務
2.2 賃上げ環境整備と中小企業支援(全業種)
「賃上げ」は政府の最重要課題です。賃上げ(最低賃金1500円以上)を実現するための原資を稼ぐための「省力化投資」に対し、手厚い支援が用意されています。
省力化投資・生産性向上支援
予算規模:約3,400億円(中小企業生産性革命推進事業)
主な補助金:
- IT導入補助金
- 中小企業成長加速化補助金やデジタル化・AI導入補助金など
- ものづくり補助金
価格転嫁と取引適正化
予算規模:148億円
法的背景:2026年1月施行「中小受託取引適正化法」
企業への影響:
- 発注側(大企業):買いたたきの監視強化、コンプライアンス体制整備
- 受注側(中小企業):価格交渉ノウハウの習得支援
3. 戦略分野への大規模投資(GX・AI・半導体)
成長分野への投資は、国策として強力に推進されます。これらの分野に関連する事業を行う企業には、大きなビジネスチャンスがあります。
GX(グリーントランスフォーメーション)
2050年カーボンニュートラルに向け、GX分野には国庫債務負担行為を含め約0.7兆円規模の予算が措置されています。
- ペロブスカイト太陽電池:サプライチェーン構築への投資支援
- 水素・アンモニア:製造・利用拠点への支援
- 浮体式洋上風力:実証事業から商用化フェーズへの移行支援
AI・半導体・次世代技術
AIや半導体は、もはや「産業のコメ」を超えた「戦略物資」です。
- AI・半導体基盤:0.3兆円規模の投資(データセンター地方分散など)
- 量子コンピュータ:産業化に向けた1,004億円の投資
- フュージョンエネルギー(核融合):発電実証へ200億円(国庫債務含め600億円)
4. 企業が今すぐ準備すべき3つのアクション
補正予算案の成立後、各種補助金の公募や法改正の施行が順次始まります。企業は以下の3点を先行して準備してください。
① 補助金申請の準備(2025年度通年)
特に「省力化投資補助金」や「IT導入補助金」は、人手不足に悩む中小企業の強力な武器になります。自社の課題を棚卸しし、どの設備投資が必要か計画を立て始めましょう。
② 価格転嫁交渉の体制整備(〜2026年1月)
中小受託取引適正化法の施行を見据え、発注側・受注側双方が契約条件の見直しを進める必要があります。「パートナーシップ構築宣言」への参加も有効な手段です。
③ サプライチェーンのリスク総点検
経済安全保障の観点から、調達ルートの特定国依存リスクを洗い出してください。政府の支援策(サプライチェーン強靱化事業)を活用し、国内回帰や調達先多元化を検討する好機です。
5. まとめ:危機管理投資が成長への鍵
令和7年度補正予算案は、単なる景気対策ではありません。世界情勢が不安定化する中で、日本企業が生き残るための「体質改善」を促すものです。
短期的な補助金活用はもちろん重要ですが、中長期的には「経済安全保障」や「脱炭素」といった新しいルールに適応できた企業だけが生き残る時代となります。本記事を参考に、攻めと守りの両面から経営戦略を再構築してください。なお、補正予算の第三の柱「防衛力と外交力の強化」は米国関税対策を含みますが、機会を改めてまた記載することとします。
あくまでも案であり、今後検討が進みます。
