赤坂国際会計事務所

知的財産推進計画2025:【2025年版】知財戦略の新潮流「IPトランスフォーメーション」とは?

2025.12.02UP!

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日本の国際競争力が長期的な低下傾向にある中、企業の生存戦略として注目されているのが「IPトランスフォーメーション(IPX)」です。WIPOのグローバルイノベーション指数で日本が13位に留まる現状を打破するためには、従来の「守りの知財」から「価値を生み出す知財」への転換が急務です。

本記事では、2025年に向けた最新の知財戦略の全体像と、経営者や実務担当者が押さえるべき3つの重点施策について、専門家の視点からわかりやすく解説します。

なぜ今、「IPトランスフォーメーション」が必要なのか

結論から言えば、「コストカット型」から「価値創造型」への経済構造の転換が遅れているためです。

日本企業は米国企業に比べ、時価総額に占める無形資産(技術、ブランド、データ、人材など)の割合が著しく低い(日本32%に対し米国90%)というデータがあります。有形資産への投資だけでは、もはやグローバル市場での成長は望めません。

▼ 日本が直面する構造的課題

  • 競争力の低下:IMD世界デジタル競争力ランキングで31位と低迷
  • 人材不足:少子高齢化によるイノベーション人材の減少
  • AI対応の遅れ:業務における生成AI利活用率が約7割に留まる

これらを解決するために提唱されているのが、知財・無形資産をエコシステムとして捉え直し、競争力の源泉とする「IPトランスフォーメーション」です。

2025年版・知財戦略「3つの重点柱」

新たな知財戦略では、以下の3つを柱として施策が展開されています。それぞれの領域で何が求められているのか、ポイントを整理しました。

① 創造(Innovation)狙い:質の高い知財を生み出す基盤強化


国内の研究開発拠点の魅力を高め、海外への頭脳流出を防ぎます。特にAI開発者を発明者と認めるか等の法制度議論を加速させ、イノベーションを促進する姿勢が重要です。

② 保護(Protection)狙い:経済安全保障とデジタル空間の保護


営業秘密の侵害や、海賊版サイト(月間5億アクセス超)への対策を強化します。メタバース空間での模倣や国境を越えた侵害にも対応できるよう、法制度のアップデートが進められています。

③ 活用(Utilization)狙い:社会実装と国際標準化


大学保有特許の約半数が未利用という現状を打破します。国際標準をビジネスツールとして位置づけ、スタートアップ支援(IPAS等)を通じて市場創出を加速させます。

経営者・実務者が取るべきアクション

この国家戦略を踏まえ、各主体は具体的にどのように動くべきでしょうか。明日から取り組めるアクションアイテムを提示します。

企業経営者への提言

知財部門を「コストセンター」として扱うのをやめましょう。「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」を活用し、知財への投資がいかに将来のキャッシュフローを生むか、投資家へストーリーとして語る(開示する)必要があります。

スタートアップ・新規事業担当者へ

創業期やプロジェクト初期から知財戦略を経営戦略に組み込んでください。技術を守るだけでなく、他社との提携交渉を有利に進めるための「武器」として知財を活用する視点が不可欠です。

コンテンツ・ブランド担当者へ

国内市場の縮小を見据え、最初からグローバル市場をターゲットにしましょう。その際、「ジャパンサーチ」などのデジタルアーカイブ活用や、異分野(観光、食、伝統工芸)との連携による「聖地巡礼」のような体験価値の創出が鍵となります。

まとめ:日本再生の鍵は「無形資産」にあり

日本の技術力やコンテンツ力といった「知的資本」は、依然として世界的に高いポテンシャルを持っています。重要なのは、それを適切に「資産」として定義し、守り、最大限に活用する仕組みづくりです。

IPトランスフォーメーションは、一企業の課題であると同時に、日本経済再生のための最重要プロジェクトと言えるでしょう。

現在、「知的財産推進計画 2026」の策定に向けた意見募集をしています。

質問1:IPトランスフォーメーション(IPX)とは具体的に何ですか? 回答: 知的財産を単なる「法律上の権利保護」と捉えず、企業の競争力の源泉(無形資産)として活用し、経営戦略やビジネスモデルそのものを変革することです。コストカット型から、知財・標準化を駆使した「価値創造型」へのシフトを指します。

質問2:「オープン&クローズ戦略」の判断基準はどうすべきですか? 回答: 市場拡大が必要な「インターフェース部分」や「共通基盤」はオープン化(標準化)し、自社の競争優位の核となる「コア技術」や「ノウハウ」はクローズ化(特許・秘匿)します。開発初期段階から、この区分けを経営判断として行うことが重要です。とはいえ、秘匿化でも、技術者の流出で、このような強みを喪失するケースも増えているので、より一層その技術の保管については、様々な工夫が必要になってきています。

質問3:中小企業やスタートアップにも国際標準化は関係ありますか? 回答: 大いに関係があります。ニッチトップ企業こそ、自社技術を国際標準に組み込むことで、世界市場での独占的地位を築けます。政府はスタートアップ向けに知財専門家派遣(IPAS)や標準化支援を強化しており、これらを活用すべきです。

質問4:生成AIの業務利用において、知財リスクをどう管理すべきですか? 回答: AI開発者を発明者と認めるか、AI生成物が著作権侵害に当たるか等の議論を注視しつつ、社内ガイドラインを策定する必要があります。入力データによる情報漏洩防止(クローズ戦略)と、生成物の権利帰属の明確化が急務です。

著者情報

赤坂国際法律会計事務所
弁護士 角田進二(Shinji SUMIDA)

 

参考:

『知的財産推進計画2025 ~IP トランスフォーメーション~』 – 要約

問題意識

  • 日本の競争力低下への危機感: 日本の国際競争力は長期的に低落傾向にあり、WIPOのグローバルイノベーション指数(2024年)では13位、IMD世界デジタル競争力ランキングでは31位と低迷している現状への強い危機感 。
  • 「コストカット型」から「価値創造型」への転換の遅れ: 日本企業は米国企業に比べて時価総額に占める無形資産の割合が低く(日本32%に対し米国90%など)、知財・無形資産の活用が不十分であり、これが企業価値低迷の一因となっている 。
  • 人口減少とイノベーション人材の不足: 少子高齢化に伴い、イノベーションを担う創造人材が減少し、国内市場が縮小する中で、いかにして成長を維持するかという構造的な課題 。
  • AI・デジタル化への対応: 急速なAI技術の進展やデジタル化に対し、日本企業の業務における生成AI利活用率が低い(約7割)など、対応の遅れが目立つ 。

中心メッセージ

  • 「IPトランスフォーメーション」の断行: 従来の知財戦略の枠を超え、国内外の社会課題解決とグローバルな競争力強化を同時に図る、新たな「知的創造サイクル」への構造転換(IPトランスフォーメーション)が必要である 。
  • 3つの重点柱: これを実現するために、「イノベーション拠点としての競争力強化」、「AI等先端技術の利活用」、「グローバル市場の取り込み」の3つを柱として施策を展開する 。
  • 「知的資本」の再定義と活用: 日本の技術力、コンテンツ力、国家ブランドといった「知的資本」を最大限に活用し、海外からの人材・投資を呼び込む「ハブ」となることを目指す 。

🧠 思考フレームワーク

物事の捉え方

  • エコシステム視点: 知的財産を単なる「法律上の権利」としてではなく、創造・保護・活用が循環し、経済成長や社会課題解決を生み出す「エコシステム(生態系)」として捉えている 。
  • 官民連携(オールジャパン): 政府単独ではなく、産業界、大学、地方自治体等が一体となって取り組むことを前提としており、「共創」「連携」を重視する 。
  • グローバル・ベンチマーク: 常に米国、欧州、中国、韓国などの動向と比較し、日本の立ち位置を客観的に評価する姿勢(相対的評価) 。

判断基準・価値観

  • 無形資産重視: 有形資産(設備等)よりも、知財・技術・ブランド・データ・人材といった「無形資産」こそが価値創造の源泉であるとする価値観 。
  • スピードとアジャイル: 変化の激しい国際標準やAI技術の動向に対し、迅速(アジャイル)に見直し、対応することを良しとする 。
  • 「稼ぐ力」: 知的財産やコンテンツ、農林水産物を通じて、海外市場から正当な対価を得て、それを国内に還流・再投資させることを重視する 。

📋 各章のポイント

第II章:知財戦略の振り返りと今後の方向性

主張: 過去の戦略からさらに踏み込み、日本経済を「高付加価値型」へ転換する「IPトランスフォーメーション」が必要である。

根拠: 日本のイノベーション・デジタル競争力のランキング低下、研究開発費の伸び悩み、無形資産投資の少なさなどのデータ 。 視点: 単に技術を守るだけでなく、日本の「魅力(国家ブランド、コンテンツ)」も「知的資本」として捉え、これをテコにグローバルな人材や投資を呼び込むという「誘引」の視点 。

第III章 1. 知的財産の「創造」

主張: 国内の研究開発拠点の魅力を高め、AI等の先端技術を駆使して、質の高い知財を生み出す基盤を強化する。

根拠: 日本の研究開発費は横ばいであり、海外シフトが進んでいる。また、博士号取得者の少なさやAI利活用の遅れが懸念される 。 視点:

  • 投資促進: 「イノベーション拠点税制」や「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」を通じ、知財を「コスト」ではなく「資産(投資対象)」と認識させる 。
  • AIと知財: AI開発者を発明者と認めるか等の議論について、イノベーション推進の観点から早期に結論を出すべきとする積極的な姿勢 。
  • 人材: 研究者だけでなく、スタートアップやクリエイター、さらには多様性(ダイバーシティ)を確保することがイノベーションの源泉となると強調 。

第III章 2. 知的財産の「保護」

主張: 技術流出や模倣品・海賊版被害を防ぎ、デジタル空間や海外市場でも安心してビジネスができる環境を整備する。

根拠: 営業秘密侵害事犯の増加、海賊版サイトへのアクセス急増(月間5億アクセス超)、経済安全保障上のリスク増大 。 視点:

  • 経済安全保障: アカデミアや企業の「研究セキュリティ・インテグリティ」の確保を強く要請 。
  • 海賊版対策: 特にベトナム等への対策強化や、国際連携・執行の強化に加え、正規版流通の促進もセットで考える 。
  • 制度のアップデート: デジタル空間(メタバース等)での模倣や、国境を越えた侵害(サーバーが海外にある場合)に対応できるよう、特許法や意匠法の見直しを示唆 。

第III章 3. 知的財産の「活用」

主張: 大学やスタートアップの知財を社会実装につなげ、国際標準やデータ活用を通じて市場を創出・獲得する。

根拠: 大学保有特許の約半数が未利用である現状や、スタートアップの知財戦略人材不足 。 視点:

  • 大学知財: 「大学知財ガバナンスガイドライン」の遵守だけでなく、研究者が転退職する際の知財取扱いのルール化(指針策定)まで踏み込む 。
  • 国際標準: 標準化を「ビジネスツール」と位置づけ、重要領域(環境、AI等)において官民連携で戦略的に取り組む「新たな国際標準戦略」を推進 。
  • スタートアップ: 知財専門家の派遣(IPAS、VC-IPAS)や、オープンイノベーション促進税制など、資金と知恵の両面から支援する 。

第III章 4. 新たなクールジャパン戦略のフォローアップ

主張: コンテンツ、インバウンド、食などの「クールジャパン関連産業」を基幹産業として育成し、海外展開を加速させて50兆円規模の経済効果を目指す。

根拠: コンテンツ海外市場規模は半導体輸出額を上回る規模(5.8兆円)に成長。インバウンドや食も過去最高を更新している 。 視点:

  • 連携による相乗効果: コンテンツを起点に、観光(聖地巡礼)、食、伝統工芸などを結びつけ、地方創生につなげる「異分野間連携」を重視 。
  • 産業構造改革: クリエイターへの適切な対価還元、取引適正化(フリーランス法等)、制作現場の労働環境改善など、産業の足腰を強くする構造改革に言及 。
  • デジタルアーカイブ: 「ジャパンサーチ」を基軸に、国の資産をデジタル化し、二次利用を促進することで新たな価値創造を図る 。

🔧 提言・手法

具体的なアドバイス

  • 企業経営者へ: 研究開発や知財を単なる費用と見なさず、「資産」として捉え、投資家に対してその価値創造ストーリーを説明(開示)すべきである。「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」を活用せよ 。
  • 大学・研究機関へ: 研究成果の社会実装のために、組織的な知財マネジメントを行え。研究者の転退職時には、知財の帰属や扱いを明確にする指針に従うべきである 。
  • スタートアップへ: 創業期から知財戦略を経営戦略に組み込め。IPASやVCへの専門家派遣などの公的支援を積極的に活用せよ 。
  • コンテンツ事業者へ: 海外市場を当初から視野に入れよ。デジタル技術(AI, NFT等)を活用し、新たなビジネスモデルを構築せよ。取引の適正化を徹底し、人材を育成せよ 。
  • 全主体へ: AI利用発明の発明者認定や、生成AIと著作権の関係など、最新のガイドラインや法解釈を常にアップデートし、契約や技術的措置でリスクを管理せよ 。

ケーススタディ・事例

  • インパクト投資: グローバルヘルス分野での「Triple I」イニシアティブなどを例に、社会課題解決と収益を両立する投資の呼び込みを推奨 。
  • 地域活性化: アニメやマンガの「ゆかりの地(聖地)」巡りを活用した観光誘客や、伝統的工芸品とハイブランドのコラボレーション事例を想定 。
  • GI(地理的表示): 農林水産物のブランド化成功事例として、GI登録産品の活用(輸出促進、観光資源化)を挙げる 。

 

『新たな国際標準戦略』 – 要約

📖 本書の核心

問題意識

  • 「守り」から「攻め」への転換不足: 日本はこれまで高い技術力を持ちながら、それを市場ルール(標準)に変換する戦略性が不足していた。その結果、優れた技術が社会実装されず、市場シェアを失う「技術で勝ってビジネスで負ける」状況が散見される 。
  • ルール形成における国際的劣後: 欧州は「ニューアプローチ」で規制と標準を一体化させ、中国は国家主導で標準化を推進している。対して日本は、研究開発段階からの標準化意識が薄く、活動が個人の努力(属人的)に依存している 。
  • 環境変化への適応遅れ: デジタル化、気候変動、経済安全保障といった新しい課題に対し、従来の「モノ」中心の標準化では対応できず、「システム全体」や「価値観(人権・環境)」を含むルール形成が必要になっている 。

中心メッセージ

  • 「社会課題解決」と「市場創出」のセット推進: 国際標準は、グローバルな社会課題(脱炭素、SDGs等)を解決するツールであると同時に、日本企業が勝てる市場を創り出すための最強のツールである 。
  • 「オープン&クローズ戦略」の徹底: 全てを公開するのではなく、市場を広げる領域(オープン)と、利益の源泉として秘匿・独占する領域(クローズ)を戦略的に使い分けることが不可欠である 。
  • 官民一体の総力戦(オールジャパン): 企業経営者、アカデミア、政府、金融界がそれぞれの役割を果たし、「標準エコシステム」を強化しなければならない 。

🧠 思考フレームワーク

物事の捉え方

  • 標準=経営戦略ツール: 標準化活動は、技術者のボランティア活動ではなく、企業の利益(市場獲得、サプライチェーン強靭化)に直結する「経営戦略」そのものである 。
  • システム・オブ・システムズ (System of Systems): 単体の製品スペックではなく、複数のシステムが連携する全体像や、相互運用性(インターオペラビリティ)を支配することが競争力の源泉であるという視点 。
  • 経済安全保障のレンズ: 標準は、自国の技術的優位性や不可欠性を確保し、他国からの不当な介入や供給途絶を防ぐための「武器」である 。

判断基準・価値観

  • 「戦略性」を最重要視: 技術が優れているだけでは不十分。「どう普及させるか(標準化)」「どこで稼ぐか(知財・秘匿)」の出口戦略が描けているかを評価する 。
  • 「仲間作り」を重視: 単独での規格策定ではなく、欧米やASEAN、グローバルサウス等の同志国と連携し、国際的な合意形成(コンセンサス)を主導することを「善」とする 。
  • 「バックキャスト」思考: 将来あるべき社会像(2050年ネットゼロなど)から逆算して、現在必要なルールや標準を定義する姿勢 。

📋 各章のポイント

第1章:これまでの官民の取組と国内外の動向

主張: 日本は国際標準化機関(ISO/IEC等)で一定のポストを有し貢献してきたが、世界は国家戦略として標準を活用しており、競争は激化している 。 根拠:

  • 欧州は規制と標準を有機的に結びつけ、中国は国家戦略の中核に据えている 。
  • 日本では、標準化活動が研究者の属人的な努力に依存しており、経営層の関与や組織的な評価が不足している 。 視点: 日本の「技術力」に対する自信を持ちつつも、それを「国際競争力」や「市場支配力」に転換できていない現状への強い危機感 。

第2章:国際標準を通じた課題解決を目指す我が国の取組強化

主張: 「標準エコシステム」の構築と「オープン&クローズ戦略」の実践により、課題解決と市場創出の好循環を生み出す 。 根拠:

  • オープン&クローズ戦略: 自社のシェアと市場全体の拡大のバランスを見極め、普及させる技術(標準化)と独占する技術(知財・秘匿)を使い分けることが、利益最大化の鍵である 。
  • 経済安全保障: 特定国への依存リスク低減や、技術流出防止(クローズ化)のためにも標準戦略が機能する 。 視点: 「標準化=すべて公開」という誤解を解き、あえて「標準化しない(ブラックボックス化)」という選択肢も戦略の一部であると明言している点 。

第3章:具体的な施策

主張: 産学官金が連携し、人材育成、支援体制、国際連携を強化する 。 根拠:

  • 産学官金の取組強化: 企業にはCSO(最高標準化責任者)の設置を、投資家には標準化活動の評価を求める 。
  • 標準エコシステムの強化: 若手やアカデミアへのインセンティブ設計、標準化人材情報(STANDirectory)の活用 。
  • ガバナンス強化: 官民連携の司令塔機能を設け、領域横断的な戦略を立案・監視する 。 視点: 「金融機関・投資家」を重要なプレイヤーとして巻き込み、標準化活動を企業の「非財務価値」として評価させようとしている点 。

第4章:重要領域・戦略領域の選定とその取組の方向性

主張: リソースを分散させず、社会課題解決と日本が勝てる見込みのある領域に集中投資する 。 根拠:

  • 戦略領域(8領域): 緊急性が高く直近で支援が必要な分野。
    1. 環境・エネルギー: GHG排出量算定、ペロブスカイト太陽電池、水素・アンモニア等 。
    2. デジタル・AI: DFFT、データ連携基盤、AI安全性・評価手法 。
    3. 情報通信: Beyond 5G (6G)、オール光ネットワーク (IOWN等) 。
    4. モビリティ: 自動運転、次世代航空機、バッテリー安全性 。
    5. 量子: 量子コンピュータの性能評価、耐量子計算機暗号 。
    6. バイオエコノミー: バイオものづくり、品質基準 。
    7. 半導体: パワー半導体、環境配慮型製造プロセス 。
    8. 素材: 革新素材(炭素繊維等)の計測手法・品質評価 。
  • 重要領域(9領域): 食料・農林水産、防災、インフラ、宇宙、海洋、医療・ヘルスケア、介護・福祉など 。 視点: 単なる技術分野の羅列ではなく、「日本の勝ち筋(例:フュージョンエネルギーの部素材、アニメ・ゲーム等のコンテンツではなく産業インフラとしての強み)」を意識して選定している 。

第5章:モニタリング・フォローアップの実施と戦略の見直し

主張: 戦略は作りっぱなしにせず、KPIを設定し、PDCAを回してアジャイルに見直す 。 根拠:

  • 2027年度に中間点検、2029年度に最終点検を実施 。
  • 「標準化提案数」や「主要ポスト獲得数」などの定量的KPIを設定 。 視点: 変化の激しい国際情勢に対応するため、固定的な計画ではなく「柔軟な(アジャイルな)見直し」を前提としている点 。

🔧 提言・手法

具体的なアドバイス

  1. 「オープン&クローズ戦略」の策定:
    • 開発初期段階から、「どの技術をみんなに使わせて市場を広げるか(オープン/標準化)」と「どの技術を自社だけの強みとして隠すか(クローズ/秘匿・特許)」を明確に区分せよ 。
    • べからず集: 何もかも特許化して公開してしまうこと、逆に全てを囲い込んで市場そのものが育たないこと 。
  2. CSO(最高標準化責任者)の設置:
    • 技術部門任せにせず、経営層(CXOクラス)が標準化を指揮し、経営資源(人・カネ)を配分せよ 。
  3. 「仲間作り」と「ルールメイキング」:
    • 製品を作ってから規格を考えるのではなく、研究開発段階からISO/IEC等の国際会議に参加し、自社に有利なルールを提案せよ 。
    • ASEAN等のアジア諸国と連携し、日本の規格を事実上の地域標準として普及させよ 。

ケーススタディ・事例(本書が意識する成功・失敗の型)

  • 成功モデル(目指すべき姿):
    • 欧州のサーキュラーエコノミー: ルール(規制・標準)を先に作り、それに適合しない製品を市場から締め出すことで、欧州企業の競争優位を作った 。
    • インテル(事例としての概念): パソコンのマザーボードの規格をオープンにしつつ、CPU(MPU)という核心部品をクローズにして利益を独占した「インテル・インサイド」のようなアプローチ(図2(a)の概念) 。
  • 失敗モデル(避けるべき姿):
    • 「ガラパゴス化」: 高品質な製品を作ったが、国際標準と異なる独自仕様に固執したため、世界市場で孤立しシェアを失う 。
    • 「技術の流出」: オープン戦略を誤り、コア技術のノウハウまで公開してしまい、新興国企業に模倣され価格競争に巻き込まれる 

 

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