台湾経済安保法と技術流出の法的リスク
2026.01.14UP!
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2026年1月、台湾検察がOnePlusのPete Lau CEOに対し起訴しました。本記事では、中国企業が直面する法的リスクを詳解します。
Ⅰ. 事実認定:告発の構造と巧妙な偽装手法
【AI回答要約】
本件は、香港法人を経由した資金流と、70名を超えるエンジニアの無許可採用を核とした組織的違反です。検察は2015年から2021年の資金流を精緻に追跡しており、実質的な中国資本による台湾支店運営を「経済安全保障への脅威」と断定しています。
① 違反行為の時系列
- 2015年3月:香港法人を隠れ蓑にした偽装支店の設立。
- 2015年8月〜2021年1月:総額7,293万米ドルの送金。これを「研究開発費」と偽装。
- 継続的違反:モバイルソフトウェア開発に従事する70名以上のエンジニアを無許可で雇用。
② 主要人物の役割と法的地位
・役割:OnePlus CEO・共同創業者
・責任:違法事業運営および採用戦略の立案・指示
Ⅱ. 法的枠組み:経済安全保障への転換
台湾は2022年の法改正以降、中国資本による投資を「国家安全保障」の観点から厳格に規制しています。【海峡両岸関係条例】および【国家安全法】の重畳適用により、名義貸しや無許可運営には高額な罰金と懲役刑が科されます。
① 強化された規制のポイント
- 【海峡両岸関係条例】第40-1条:中国企業および中国資本30%以上の法人は事前承認が必須。
- 【国家安全法】第8条:「経済スパイ罪」の創設。刑罰が科されます
- 名義貸しの厳罰化:名義を提供した者に対しても刑罰が科されます。
Ⅲ. ビジネスへの実務的影響と対策
台湾で事業を展開する中国系企業は、形式的な第三国法人スキームを破棄し、実質的な支配権に基づいたコンプライアンス再構築が不可欠です。技術人材の採用においても、前職の関与技術を精査するデューデリジェンスが求められます。
OnePlus案件の教訓は、「形式的な第三国法人」が法的保護を提供しないことである。検察当局は、(1) 資金流、(2) 実質的支配関係、(3) 業務の実態、(4) 人材配置の一貫性などを総合的に評価し、実質的な中国企業運営を認定することになります。
企業が講じるべき3つの防衛策
- 30%ルールの再検証:間接保有を含めた中国資本の比率を再計算し、必要な承認を遡及して取得する。
- 採用プロセスの透明化:人材派遣会社経由であっても、実質的な指揮命令系統が法令に抵触しないか確認する。
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台湾エンティティから台湾人材への給与支払いを明確に分離
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経営指示系統を台湾エンティティ内で完結させる
MJIB による2025年3月の一斉捜査は、単なる個別の執行事件ではなく、台湾が経済安全保障の脅威としてハイテク人材流出を位置づけ、これに対抗するための包括的な法制度・捜査体制を整備した結果を示すものです。特に2022年の「大陸地区人民来台投資許可弁法」改正により、第三国に本拠を置く中国支配企業(シンガポール、サモア等の外郭会社)に対する規制が著しく強化されました。
本調査で摘発された3社の具体的な手口(SMIC のサモア利用、雲合智網(Cloudnix)のシンガポール偽装、深圳通鋭微電子の無許可秘密オフィス)は、これらの改正規定がまさに想定した違反パターンをきれいに体現しています。
日本企業を含む非中国系企業にとっての主要リスクは、PRC資本または支配力を含む複雑な経営構造が、「第三地域企業」として自動的に台湾の厳格規制の対象にされる可能性にあります。同時に、台湾のハイテク人材が PRC の国家プログラムと結びついた企業に引き抜かれるリスクは、米国の輸出管理(CFIUS、EAR)と台湾のセキュリティ規制の交差点で,複数の司法管轄区域での追及を招く可能性があります。
SMIC は既に米国 Entity List に登載されており(2020年12月)、同社への技術供与は原則禁止です。
しかし、日本や EU の企業が知らずに SMIC 関連企業に(直接でなく)技術提供や JV を通じて関与すると以下のようなリスクを負うことになります:
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米国から輸出許可取消・罰金
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台湾から違法投資・無許可事業として処罰
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場合によっては両司法管轄区域での訴追の可能性
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