赤坂国際会計事務所

経済安保ガイドラインの核心|経営者の善管注意義務と実務対応

2026.03.04UP!

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この記事では、政府が公表した「経済安全保障経営ガイドライン(第1版)」の核心を要約し、企業が取り組むべき「自律性」と「不可欠性」の確保、および経営者の善管注意義務について弁護士が実務的視点で解説します。

国際情勢の激変により、経済活動が安全保障の手段となる「経済の武器化」が常態化しています。これを受け、政府は企業経営の根幹に経済安全保障を据えるよう指針を示しました。本記事では、単なる法令遵守を超えた「投資としての経済安保」を、【経済安全保障推進法】の枠組みとともに分かりやすく整理します。地政学リスクを経営のレジリエンス(回復力)に変えるためのヒントとしてご活用ください。

経済安全保障経営ガイドラインの核心:自律性と不可欠性

本ガイドラインの目的は、日本企業の「自律性(Autonomy)」と「不可欠性(Indispensability)」を官民一体で強化することにあります。

1. 自律性の確保(サプライチェーンの強靭化)

特定国への過度な依存を脱却し、いかなる有事においても事業を継続できる体制を指します。

  • 原材料の多角化: 特定地域からの調達途絶リスクをシナリオ化し、代替先を確保する。
  • 基幹インフラの防護: ソフトウェアのバックドア混入リスクなど、無形資産のセキュリティを強化する。

2. 不可欠性の確保(戦略的優位の確立)

「この企業の技術がなければ世界が困る」という状態を作り出す「攻め」の戦略です。

  • 技術流出の防止: コア技術の徹底した管理と、役職員への待遇改善による人材流出の抑制。
  • 絶え間ないイノベーション: 技術のコモディティ化を見越し、次世代の不可欠性を創出し続ける。
専門家の視点赤坂国際法律会計事務所では、本ガイドラインへの対応はもはや任意の努力義務ではなく、取締役の「善管注意義務」の一部を構成しつつあると見ています。 地政学リスクを看過し、サプライチェーン途絶による損失を招いた場合、株主代表訴訟のリスクに直面する可能性があるため、経営直轄のガバナンス構築が急務です。

以下の流れで、検討することが必要です

  1. 現状把握:データの収集とデータベース化(可視化)を促す。
  2. リスク評価:最悪のシナリオ(供給途絶、技術流出)を想定させる。
  3. 戦略立案:多角化やイノベーションへの「投資」としてのアクションプランを提示する。
  4. 体制構築:経営直轄のガバナンスと、ステークホルダーとの対話手法を教示する。

御社の経済安保リスク診断(1つでも該当すれば対策が必要です)

  • □ 特定の1国からの原材料調達が全体の50%を超えている
  • □ 海外拠点からの技術アクセス権限が、本社と同等に設定されている
  • □ 経済安保に関する横断的な「司令塔(部署・担当)」が存在しない
  • □ 退職者による秘密保持契約(NDA)の運用が形式的になっている

よくある質問(FAQ)

Q1. ガイドラインに法的拘束力はありますか?
A1. 直接的な罰則はありません。しかし、これに沿った対応を怠り損害が出た場合、経営者の法的責任(善管注意義務違反)が問われる根拠となり得ます。

Q2. 中小企業も対象になりますか?
A2. はい。大手企業のサプライチェーンに組み込まれている場合、取引先から本ガイドライン準拠の管理体制を求められるケースが増えています。

Q3. まず何から手をつければ良いですか?
A3. サプライチェーンの「可視化(データベース化)」です。最上流の供給元がどこにあるかを特定することが出発点となります。

著者情報

赤坂国際法律会計事務所

弁護士 角田進二(Shinji SUMIDA)

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