赤坂国際会計事務所

# 【2026年外為法改正】投資審査はどう変わる?6つの重要論点

2025.12.16

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財務省の「関税・外国為替等審議会」において、次期外為法(外国為替及び外国貿易法)改正に向けた議論が本格化しています。

2024年度の事前届出件数が約2,900件に達する中、政府は「審査の効率化」と「抜け穴(ループホール)の防止」という2つの課題に直面しています。

本記事では、2025年10月31日に公開された財務省資料に基づき、2026年にも想定される法改正の方向性と、企業法務担当者が押さえるべき**6つの実務論点**を解説します。

 

1. 改正の全体像:単なる「厳格化」ではなく「メリハリ」へ

**結論:改正のキーワードは「リスクベース」です。不要な届出を減らし(合理化)、真にリスクが高い投資(間接取得や特定国)を捕捉する方向へシフトします。**

 

近年の地政学リスクの高まりを受け、G7各国では投資審査制度の強化が進んでいます。日本においても、安全保障環境の変化に対応しつつ、健全な投資を阻害しないための「予測可能性」の確保が急務となっています。

財務省が示した方向性は以下の3点に集約されます。

1. **審査の効率化**:急増する届出件数を抑制するため、リスクの低い案件(役員再任等)を合理化する。

2. **捕捉範囲の拡大**:投資実行後の「親会社変更」など、現行法の抜け穴を塞ぐ。
3. **手続の明確化**:「リスク軽減措置」などの運用実態を法令・様式レベルで明確にする。

 

2. 【論点①】事前届出の「合理化」と「重点化」

**結論:年間約3,000件に迫る届出件数を適正化するため、「役員再任」などの形式的な届出が不要になる可能性があります。**

 

届出件数急増の背景
2024年度の事前届出件数は**2,903件**に達し、2018年度比で約5倍に増加しました。その内訳を見ると、以下の2つの要因が浮き彫りになります。

* **「株主の行為」に関する届出**:1,058件。特に「役員選任の同意」が多くを占めています。

* **「情報通信技術(ICT)関連」への投資**:2,072件(延べ数)に達し、全体の過半数を占めています。

予想される改正ポイント財務省は、リスクに応じたメリハリ付けを検討しています。

**💡 合理化のターゲット**

* **役員再任の届出免除**:同じ役員が再任される場合で、特段の事情変更がないケースは届出不要とする案が有力です。

* **ICT分野の精査**:サイバーセキュリティの観点から、真に審査が必要な領域に限定されているか再検証が行われます。

 

3. 【論点②】「リスク軽減措置」の明文化

 

**結論:審査をパスするための条件(リスク軽減措置)が、届出様式として正式に導入され、事後変更時の手続もルール化される見込みです。**

現行の実務課題

現在も、国の安全等に係る懸念を解消するため、外国投資家が「経営に関与しない」等の**リスク軽減措置**を申し出るケースがあります。しかし、これは実務上の運用にとどまっており、以下の課題があります。

* 届出書の「経営関与の方法」欄に記載するなど、位置付けが曖昧。
* 投資後に事情が変わった場合(約束を破るなど)の手続が決まっていない。

予想される改正ポイント

* **届出様式の改訂**:リスク軽減措置を記載する専用項目が設けられる可能性があります。
* **変更手続の整備**:投資後に措置内容を変更する場合の届出や、違反時の措置命令(株式売却等)との接続が明確化されるでしょう。

4. 【論点③】投資後の「間接取得」を捕捉

 

**結論:投資家が買収されて「親会社」が変わるケースが、新たに審査対象となる可能性が高いです。**

 

最大の抜け穴(ループホール)

現行法では、一度審査をクリアした外国投資家(A社)が、その後に別の外国投資家(C社)に買収された場合、日本企業にとっては「実質的な支配者」が変わるにもかかわらず、事前届出や審査の対象外となっています。

**⚠️ 間接取得のイメージ**

>
> 1. 外国投資家Aが日本企業Bに出資(審査OK)
> 2. その後、**外国投資家CがA社を買収**
> 3. 結果、C社が日本企業Bを間接支配(**現行法ではスルー**)

予想される改正ポイント

主要国と同様に、こうした「間接的な株式取得」も届出・審査の対象に含める方向で検討が進んでいます。M&Aの実務においては、買収者の背後にいる「最終的な支配者(UBO)」の変更管理が極めて重要になります。

5. 【論点④】高リスク投資家への対応強化

 

**結論:2025年5月施行の政省令改正に続き、外国政府の影響下にある投資家への監視がさらに厳格化されます。**

 

「特定外国投資家」とは
2025年5月から、外国政府等への情報収集義務を負う投資家などを**「特定外国投資家」**と定義し、包括的な届出免除制度の利用を制限するルールが始まります。

予想される改正ポイント

今後の改正では、この運用をさらに強化し、以下のような対応が検討されています。

* **潜脱防止**:ダミー会社などを使って規制を逃れようとする行為への対応。
* **国内投資家の規律**:現在は規制対象外である「国内投資家」であっても、実質的に外国政府の影響下にある場合の対応検討。

6. 【論点⑤】非指定業種への事後介入

 

**結論:規制対象外の業種(非指定業種)であっても、リスクが顕在化した場合には、政府が事後的に介入できる仕組みが強化されます。**

 

現状の限界

指定業種以外への投資は、株式取得比率が10%以上の場合に「事後報告」を行うのみです。しかし、リスクの高い投資家が非指定業種に投資し、後に安全保障上の問題が発覚した場合の対応手段が限られています。

予想される改正ポイント

* **勧告・命令の射程拡大**:事後報告案件であっても、国の安全を損なう事態が生じた場合には、是正措置(株式売却等)を命じられる法的根拠が整理される可能性があります。

 

7. 実務への影響と対策

 

2026年の改正(予想)を見据え、企業法務担当者は以下の点に留意して準備を進める必要があります。

1. **属性確認(KYC)の徹底**:投資家の背後に「誰がいるか(最終親会社)」、「外国政府との関係はないか」の確認プロセスを強化する。
2. **契約条項の見直し**:投資契約において、投資家の株主構成に変更が生じた場合の「事前通知義務」や「解除条項」を盛り込む。
3. **リスク軽減措置の管理**:当局に約束した「経営不関与」等の条件を、社内で継続的に遵守・モニタリングする体制を作る。

財務省は、関係省庁や外国当局との連携を強化し、執行体制の底上げを図っています。形式的なコンプライアンスだけでなく、実質的な安全保障リスクを見極める姿勢が求められています。

参考 指定業種・外国投資家の扱い

著者情報

赤坂国際法律会計事務所
弁護士 角田進二(Shinji SUMIDA)

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