赤坂国際会計事務所

東芝勧告に学ぶ金型無償保管リスクと2026年取適法対策

2026.01.16UP!

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公正取引委員会による東芝グループ2社への勧告は、製造業における「金型保管」の慣行を無くしていくものです。2026年1月施行の【取適法】により、下請事業者への不当な負担はより厳格に処分されます。

勧告の核心:下請事業者は「無料の倉庫」ではない

【結論】公正取引委員会は、発注予定のない金型の無償保管を「不当な経済上の利益の提供要請」と断じ、親会社のガバナンス欠如を厳しく指摘しました。これは単なる現場のミスではなく、グループ全体の構造的問題として捉えられています。

公正取引委員会の問題意識は、「巨大な発注者による無意識の収奪」に対する強い危機感にあります。特に以下の2点に対して鋭い問題提起を行っています。

  • 「預けっぱなし」の違法性:将来使うかもしれないという曖昧な理由で、下請事業者のスペースを無償占有する行為の否定。
  • 親会社のガバナンス責任:現場の違反は、親会社が作成した不適切なガイドラインや契約ひな形に起因するという指摘。

コメント:

今回の公正取引委員会による勧告は、従来の下請法運用と比べて、評価軸が明確に一段引き上げられた点に本質があります。

これまで製造業における「金型の無償保管」は、

  • 将来、発注が再開する可能性があること

  • 下請事業者側が明示的に異議を述べていないこと

  • 保管費用について請求がなされていないこと

といった事情を背景に、いわば慣行として黙認され、グレーゾーンに置かれがちでした。

しかし本件において公正取引委員会は、そうした「慣行的な黙認」を一切考慮せず、
長期間発注を行っていないにもかかわらず金型を無償で保管させる行為それ自体が、「不当な経済上の利益の提供要請」に該当すると、正面から評価しています。

特に注目すべきは、違反の帰責点が現場担当者の個別判断ではなく、企業グループ全体の設計思想に置かれた点です。
親会社である東芝に対する「申入れ」は、単なる注意喚起にとどまらず、

  • 契約書のひな形

  • 貸与金型等の管理ガイドライン

  • 金型の管理・回収・費用精算に関するフロー

といった、会社が用意した仕組みそのものが違法リスクを内包していたことを強く示唆するものといえます。

実務的に重要なのは、今回の勧告が
**「保管費用を請求されたか否か」**ではなく、
「発注者が無意識のうちにコストを下請事業者へ外部化していなかったか」
という視点で評価されている点です。

この考え方は、2026年1月施行の【取適法】が志向する、
形式的な合意や黙認の有無ではなく、取引の実質に即した対価性の確保という方向性を、先取りして示したものと位置付けることができます。

今後の実務においては、
「昔からこうしている」
「下請側も特に困っている様子はなかった」
といった説明は、法的にはもはや一切の防御になりません。

公正取引委員会の問題意識は、明確に**「無意識の加害構造」そのもの**に向けられており、
善意であっても、結果としてコストを一方的に押し付けていれば違法となり得るという、極めて明確なメッセージが発せられたと評価すべきでしょう。

東芝グループ2社への勧告内容の要約

【結論】東芝産業機器システムと東芝ホクト電子の2社に対し、計1,993個に及ぶ金型等の無償保管が認定されました。一部費用の支払いがあったものの、組織的な是正が必要であると判断されています。

① 東芝産業機器システム

被害規模:下請事業者47名に対し、1,510個の金型等を無償保管。
違反内容:令和6年2月以降、発注予定がないにもかかわらず、返却も廃棄もせず、保管費用も払わずに放置。公取委は「既に一部回収した」という弁解を認めつつも、厳格な勧告を行いました。

② 東芝ホクト電子

被害規模:下請事業者14名に対し、483個の金型等を無償保管。
違反内容:483個のうち390個を後日回収・廃棄した事実は、それまで「不要なものを預けさせていた」ことの裏返しと判定。209万円の支払実績も、全額精算としては不十分とされました。

親会社・東芝への「申入れ」が意味するもの

【結論】直接の違反者ではない親会社への「申入れ」は、グループ全体の契約ひな形自体に欠陥があったことを示唆しています。「トカゲの尻尾切り」を許さない公取委の強い姿勢の表れです。

今回の事案で最も注目すべきは、東芝本体への申入れです。子会社の違反原因が、東芝の作成した「貸与金型等の管理に関するガイドライン」にあったことが特定されました。企業がコンプライアンスを維持するためには、以下の行動が「義務」となります。

  1. ① 棚卸しの徹底(発注予定のない金型を個数単位で把握)
  2. ② 保管費用の遡及支払(過去の無償期間を算定し、現金を支払う)
  3. ③ 取締役会決議による組織的改善(単なる口頭注意で済ませない)

2026年施行【取適法】への対応指針

【結論】2026年1月1日より、下請法は【取適法】へと進化しました。中小受託事業者の適正取引を担保するため、より監視が強化されることは想定すべきです。

今後の実務においては、単なる法令順守にとどまらず、以下の視点でのガバナンス構築が求められます。

  • 実態把握:1年以上稼働していない金型がいくつあるか、具体的な数値で把握すること。
  • 対価性の確保:保管場所の賃料や人件費を誰が負担しているか、契約書に明文化すること。
  • 教育の再定義:最新の【取適法】知識を発注担当者に徹底させること。

著者情報

赤坂国際法律会計事務所
弁護士 角田進二(Shinji SUMIDA)

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