電力会社にフリーランス法違反で初勧告。取引条件明示と支払期日の実務対応
2026.03.03UP!
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1. 中部電力への勧告事案:何が問題だったのか?
公正取引委員会(以下「公取委」)は、令和8年(2025年)2月27日、中部電力株式会社に対し、【特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律】(以下【フリーランス法】)に基づく勧告を行いました。
中部電力株式会社
取引条件の明示義務違反・報酬支払期日の遵守義務違反
特定受託事業者39名
2. 違反事実の具体的詳細:実務上の「落とし穴」
【結論】今回の違反は、現場の「慣習」が法律に追いついていなかったことが原因です。特に「直ちに」という時間的制約と、60日という支払期限の厳守が、大企業であっても徹底されていなかった点が重要です。
(1)取引条件の明示義務違反
中部電力は、39名の特定受託事業者に対し、業務委託の際に給付内容や報酬額を「直ちに」書面等で明示しませんでした。後出しの契約書送付は、それだけで違反となるリスクがあります。
(2)報酬支払期日の遵守義務違反
報酬支払において、以下の2点が認定されました。
- ① 【支払期日未設定】:期日を定めず、役務提供日までに支払わなかった。
- ② 【60日超の設定】:役務提供日から60日を超える支払期日を設定した。
3. 損失の映像化:放置した場合の具体的リスク
「うちはフリーランスと仲が良いから大丈夫」という考えは危険です。例えば、現場担当者が「急ぎだから先に進めておいて。条件は後でメールするよ」と口頭で依頼したとします。この時点で問題になります。
後に公取委の立ち入り検査が入った際、メールの送信履歴から「着手日」と「明示日」のズレが容易に発覚します。その結果、社名が公表され、「コンプライアンスの欠如した企業」としてSNSやニュースで拡散されてしまいます。これが現代における具体的なビジネス損失です。
4. 自社でできること・専門家が必要なこと(線引きブロック)
社内の発注管理体制については、以下の基準で対応を分けてください。
- 自社で対応可能:現行の支払サイト(締め日・支払い日)が60日以内に収まっているかの確認、および全社への「口頭発注禁止」の通達。
- 専門家が必要:フリーランス法に対応した「基本契約書・個別発注書」の雛形作成又は依頼、およびどのような契約かの判断。
【自己診断】貴社は大丈夫?チェックリスト
一つでも当てはまる場合、早期の体制改善が必要です。
- □ 業務を開始してもらった後に、契約書や発注メールを送ることがある
- □ 支払期日が「検収後60日」になっている(※「役務提供日」からではない)
- □ 相手が個人事業主か、従業員なしの法人かを確認するフローがない
- □ 「いつも通りで」という曖昧な表現で追加発注を行っている
専門家の視点:早期対応が最もコストを抑えられます
公取委の勧告を受けてからの是正には、膨大な調査コストとブランド毀損が伴います。問題が起きる前の「仕組み作り」こそが、最も安価で確実なコンプライアンス投資です。まずは、現在お使いの発注書フォーマットが法適合しているか、その一点だけでもご確認いただくことをお勧めします。
