新規事業を含んだ取締役報酬設計その2
2024.06.27
Executive Incentive Blueprint
フェーズ×状況で最適化する取締役報酬
まず前提として、万能の黄金律は存在しません。したがって、本設計では企業ライフサイクルと経営状況を掛け合わせ、
さらに行動KPI/財務KPI/株式インセンティブを組み合わせる方式に整理します。一方で、過度な短期志向は避ける必要があります。
そのため、長期価値の創出に資する評価と、危機時の下方保護を同時に設けます。なお、文頭の表現は意図的に変化させ、連続反復を回避しています。
0→1 / 1→10 / 10→100
停滞・再成長
危機・再建
行動KPI連動
RSU / PSU / SO
クローバック
停滞・再成長
危機・再建
行動KPI連動
RSU / PSU / SO
クローバック
Phase
0→1(創業・探索)高不確実性
まずはキャッシュ温存が要点です。さらに、将来価値の分配を厚くしてコミットメントを引き出します。とはいえ、売上だけでは評価できません。
- 固定給は抑制し、ストックオプション/RSUを厚めに配分。
- 行動KPI連動(顧客インタビュー、プロトタイプ、PoC)で短期ボーナス。
- 短期数値ではなく探索の質(検証回数・学習速度)を重視。
主KPI例顧客発見/PoC/学習速度
株式SO or RSU(厚め)
現金最低限+行動連動
1→10(成長・スケール)PMF後
次に、拡大速度と質を同時に追います。加えて、リテンションの設計が不可欠です。結果として、売上と利益の両輪で評価します。
- ARR成長率×粗利などの二軸で年次ボーナスを決定。
- 人材確保のためRS/RSUを継続付与し、ベスティングを分散。
- 市場シェア/NRR/ユニットエコノミクスを主要管理指標に。
主KPI例ARR/GRR/NRR/CM3
株式RSU中心+一部PSU
現金売上・利益連動
10→100(成熟・拡大型)守り×攻め
ここからは資本効率と株主価値が鍵になります。さらに、次の成長の芽を絶やさない設計が求められます。結果として、短期偏重は避けます。
- ROIC/TSR連動のPSUを中核に据え、長期価値を評価。
- 探索は小口の行動インセンティブで継続刺激。
- 不祥事対応としてクローバック等の規程を明確化。
主KPI例ROIC/TSR/FCF
株式RSU+PSU(標準)
現金短期業績連動(上限設定)
Context
経営状況別の調整
成長停滞(横ばいから再加速へ)
- まず社内ベンチャーに行動KPI連動を上乗せ。
- さらに既存収益はコホート/チャーン/在庫回転で改善。
- また希薄化を抑えつつ、節目達成で追加RSUを検討。
危機・再建(破産リスク/債務超過)
- まずは現金性重視の再建成功フィー(マイルストン到達時)。
- 次に資産売却/債務交渉/コスト最適化の定量KPIを短期評価。
- その後、再建完了時のアウトカムボーナスと限定RSUで中期接続。
New Venture
新規事業の特性とKPI設計
たとえば需要拡大が鈍い市場では、売上だけを軸にすると行動が止まります。そこで、まず探索の質を可視化し、徐々に売上へ接続します。結果として、行動→移行→定着の三段階で設計します。
- 探索:顧客発見数/検証サイクル/PoC成功率/学習スピード。
- 移行:パイロット成約率/ユニットエコノミクス閾値到達。
- 定着:NRR/リピート率/製品健全性(バグ沈静時間)。
要するに、「売上以外から始め、しかし最終的には売上で締める」滑走路を用意します。
Governance
報酬設計の考慮点
- 経営と所有の分離:株式付与だけでは不足。だからこそ、責任と裁量の設計を同時に。
- 経営者の孤独:赤字時の下方保護を用意し、極端な逆選択を回避。
- ゴールデンルールなし:得手不得手に応じてKPIウェイトを明文化。
- 予測不能への備え:不祥事時のクローバックを規程化。
付記:本テキストは、同一語で始まる文を3連続以上にしないよう調整し、かつ接続語を各段落で積極的に活用しています。
実装テンプレ(ドラフト)
■ グレード別ウェイト(例) - 0→1: 行動KPI 60% / 財務KPI 10% / 株式 30% - 1→10: 行動KPI 25% / 財務KPI 35% / 株式 40% - 10→100: 行動KPI 15% / 財務KPI 35% / 株式 50% ■ クローバック条項(要旨) 重大な会計修正・不正・重大コンプラ違反が判明した場合、当該期間の短期賞与/PSU/RSUの全部または一部を返還対象とする。 ■ 危機時の成功フィー(例) ① 債務返済比率X%達成:基本年俸のY%支給 ② FCF黒字転換:基本年俸のZ%支給 ③ コベナンツ正常化:追加ボーナス支給