赤坂国際会計事務所

2025年日米首脳会談(トランプ・高市)合意:経済・安全保障協力の最新枠組み

2025.10.30UP!

  • blog
  • AI
  • エネルギー政策
  • サプライチェーン
  • トランプ政権
  • 国際法務
  • 日米関係
  • 日米首脳会談
  • 経済安全保障
  • 重要鉱物

「最近ニュースで聞く『日米協力』とは、具体的に何が決まったのだろうか?」「経済や安全保障にどう影響するのか全体像を知りたい」とお考えではありませんか。

2025年10月28日の首脳会談(トランプ大統領・高市早苗首相)では、これからの両国関係を定義する重要な合意がなされました。

この記事では、最新の合意に基づき確立された日米間の包括的協力枠組みについて、記載します。

今回の合意は、単なる貿易協定を超え、地政学的リスクに対応する『経済による平和対策』の具体化と言えるでしょう。

日米協力の全体像(マクロ構造)

2025年の日米協力は、米国の産業基盤再構築と日本の経済再生を両立させる「戦略的パートナーシップ」です。経済と安全保障を一体化させた包括的枠組みが特徴で、米中対立や資源リスクに対応し、両国の覇権と安全保障を強化する狙いがあります。

この協力体制は、2025年7月の5500億ドル規模の投資合意を基盤としています。この大規模投資は、米国内の雇用創出、エネルギー自給率の向上、そして防衛協力の強化を目的としています。

具体的には、以下の2つの側面から成り立っています。

  • 米国側:エネルギー、重要鉱物、AI分野で同盟国(日本)との統合を進め、覇権を維持します。
  • 日本側:積極的な対米投資を通じて経済を再生させると同時に、安全保障体制を強化します。

これは、トランプ政権が掲げる「経済による平和(Peace through Strength)」を具現化する、相互利益型の構造となっています。

産業基盤拡大:エネルギー・AI分野の投資

協力の最大の柱は、エネルギーとAI(人工知能)分野のインフラに対する大規模投資です。日本企業は米国のインフラ安定化に不可欠なミッションクリティカル設備を供給し、米国のAI競争力を支えます。これにより、日本企業は新たな市場アクセスを獲得します。

① エネルギーインフラ

日本企業が米国内のエネルギーインフラに対し、最大3320億ドルを投資します。主な内容は以下の通りです。

  • 原子炉建設:ウェスチングハウス社、GE Vernova社、日立が協力し、新型原子炉(AP1000・SMR)の建設を進めます。
  • 電力関連機器:ガスタービン(250億ドル)、電力機器(250億ドル)、冷却システム(200億ドル)を供給します。
  • インフラ保守:送電網、発電所、データセンターの安定稼働を支えるため、ソフトバンクが電力インフラの保守分野に参入します。

② AIインフラ

米国のAI競争力を下支えするため、日本の技術が投入されます。

  • 三菱電機(データセンター):300億ドル
  • TDK(電子部品):250億ドル
  • フジクラ(光ファイバー):200億ドル

これらの投資は、米国のAI開発を加速させると同時に、日本企業にとって安定した市場を確保する「相互利益型モデル」の典型例です。

サプライチェーン強靭化:重要鉱物・製造投資

なぜ今、サプライチェーンが重視されるのでしょうか? それは、特定国(特に中国)への依存リスクを減らすためです。日米は共同で重要鉱物の供給網を分散させ、製造・物流分野でも連携を強化します。

① 鉱物多様化と中国依存の低減

日米共同で、重要鉱物の供給源を多角化します。具体的には、アンモニア・尿素肥料施設(30億ドル)や銅製錬施設(20億ドル)へ新たに投資し、中国依存のリスクを低減させます。

② 製造・物流の連携強化

製造業と物流においても、連携を深めます。

  • 製造業投資:村田製作所(電子部品)が150億ドル、パナソニック(蓄電)が150億ドルをそれぞれ投資します。
  • 物流・先端材料:港湾改良(6億ドル)、高圧ダイヤモンド砥粒(5億ドル)、リン酸鉄リチウム生産(3.5億ドル)なども進められます。
  • 公正競争の促進:日本は米国製車両の輸入を促進し、米国の【公正競争法制(モバイルソフトウェア法)】を遵守します。(1.8 合格)
  • 経済安保の強化:造船MOC(協力覚書)に署名し、不透明な船舶に対する制裁や審査を強化します。

エネルギー・安全保障:購入・防衛協力

経済的な協力は、そのまま安全保障の強化に直結します。日本は米国からLNG(液化天然ガス)や石炭の購入を拡大する一方、防衛分担の実効化や、合成薬物対策など法執行分野でも協力を深め、包括的な抑止構造を形成します。

  • エネルギー購入:東京ガスとJERAが、アラスカ産LNGのオフテイク契約(長期購入契約)を締結しました。JERAの投資総額は60億ドルを超えます。また、石炭契約(1億ドル超)や、原子力廃止措置市場への参入も決定しました。
  • 防衛協力:F-35戦闘機用ミサイルの納入を加速させるなど、防衛分担の実効化を進めます。
  • 法執行協力:税関相互支援協定(CMAA)を改正し、合成薬物対策を共同で強化します。

Q1:2025年の日米協力枠組みの最大のポイントとは? A1:最大のポイントは、経済と安全保障を完全に一体化させた「戦略的パートナーシップ」である点です。従来の5500億ドル投資を基盤に、エネルギー、AI、重要鉱物といった戦略分野で両国の産業基盤とサプライチェーンを統合し、地政学リスク(特に中国)に対応する狙いがあります。

Q2:今回の合意で日本企業への影響は? A2:米国のエネルギーインフラ(原子炉、電力機器)、AIインフラ(データセンター、電子部品)、製造業(蓄電、電子部品)などへ、日本企業による大規模な投資(最大3320億ドルなど)が明記されました。対象分野の企業には巨大なビジネスチャンスが生まれる一方、米国の法規制(公正競争法制など)への遵守が強く求められます。

Q3:なぜエネルギーとAI分野への投資が中心なのですか? A3:エネルギー自給率の向上と、AI技術の覇権維持が、米国の国家安全保障の最重要課題だからです。日本はこれらのインフラを支えるミッションクリティカルな設備(電力機器、電子部品、光ファイバー)に強みがあり、両国の利害が一致した分野と言えます。

Q4:安全保障面での具体的な協力とは? A4:LNGや石炭といったエネルギーの安定調達(アラスカ産LNG購入など)に加え、防衛分担の実効化(F-35用ミサイル納入加速)や、法執行協力(合成薬物対策、不透明な船舶への制裁)が強化されます。経済基盤の強化がそのまま軍事・法執行面の抑止力強化に直結する構造です。

 

(参考情報)
本記事の記述は、以下の公式発表に基づいています。
(原文)White House Fact Sheet: U.S.-Japan Comprehensive Cooperation Framework (Oct 30, 2025)

雜訳

# 米国の産業基盤拡大とサプライチェーンの安全確保

本日、東京において、ドナルド・J・トランプ大統領は、日本による従来の5,500億ドルの対米投資コミットメントを前進させる主要プロジェクトを発表し、米国産業基盤のさらなる活性化、日本との画期的な重要鉱物協定の締結、米国産エネルギーの歴史的購入の確保、および不法薬物取引対策における日米協力の深化を実現しました。

## 米国製造業と輸出の強化

トランプ大統領と日本の高市早苗首相は、日米枠組み協定を記念する署名式を行いました。この協定の一環として、日本および日本企業各社は、以下の投資追求へのコミットメントを明示しました。

### 重要エネルギーインフラ投資:

– **最大3,320億ドル**を米国内の重要エネルギーインフラ支援に投入。これには、ウェスチングハウスとの協力によるAP1000および小型モジュール炉(SMR)の建設、GEバーノバおよび日立との協力によるSMR建設、ENTRA1 Energyからの大規模ベースロード電力インフラの供給、ベクテルおよびキーウィットとの協力による重要発電所、変電所、送電システム建設のためのエンジニアリング、調達、その他サービス、ソフトバンクグループとの協力による大規模電力インフラの設計、調達、保守のためのその他サービス、およびキンダーモルガンとの協力による天然ガス送電および電力インフラサービスが含まれます。

– **最大250億ドル**をガスタービン、蒸気タービン、および発電機などの大規模電力機器の供給に投入。これにはGEバーノバとの協力による高圧直流送電およびミッションクリティカル施設向け変電所ソリューションを含む系統電化・安定化システムが含まれます。

– **最大250億ドル**を東芝との協力による電力モジュール、変圧器、その他発電変電所機器の供給に投入。

– **最大200億ドル**をキャリアとの協力による電力インフラに不可欠な冷却システムとソリューション(チラー、空調システム、冷媒分配ユニットを含む)の供給に投入。

### AI インフラ投資:

– 三菱電機との協力によるデータセンター向け発電所システムおよび機器の供給に**最大300億ドル**、TDKとの協力による先進電子部品およびパワーモジュールに**最大250億ドル**、フジクラとの協力による光ファイバーケーブル供給に**最大200億ドル**。

### エレクトロニクスおよびサプライチェーン投資:

– **最大150億ドル**を村田製作所との協力による積層セラミックコンデンサ、インダクタ、電磁妨害抑制フィルタなどの先進電子部品生産に投入。

– **最大150億ドル**をパナソニックとの協力によるエネルギー貯蔵システムおよび電子デバイス・部品の供給に投入。

### 重要鉱物投資:

– 米国内のアンモニアおよび尿素肥料施設建設に**最大30億ドル**、米国西部における銅製錬・精製施設建設に**20億ドル**。

### 製造・物流投資:

– 米国産原油の輸出促進のための米国南部の港湾および水路の改良に6億ドル、米国内の高圧・高温ダイヤモンド砥粒製造施設の設立に5億ドル、米国内のリン酸鉄リチウム生産施設建設に3億5,000万ドル。

### 日本は米国輸出機会のさらなる拡大を約束:

– トヨタは米国製車両を日本に輸出する計画を立て、日本での流通プラットフォームを米国自動車メーカーに開放する。これは、日本が追加試験なしで米国で製造され米国の安全基準認証を受けた車両の日本での販売を受け入れるという約束の結果です。

– 日本はモバイルソフトウェア競争法を米国企業に対して差別しない方法で実施し、公正で自由な競争の必要性とユーザーの安全性・利便性のバランスを取り、知的財産権の正当な行使を尊重します。

– 米国と日本は、投資、調達、労働力、技術イニシアチブを調整することにより、両国の造船能力を拡大するための協力覚書(MOC)に署名しました。

## サプライチェーンの強靭性と経済安全保障の強化:

トランプ大統領と高市首相は、重要鉱物サプライチェーンをさらに多様化するための歴史的な重要鉱物協定に署名しました。本日の重要鉱物協定は、米国の鉱物サプライチェーンの強靭性を強化するためにトランプ大統領が外国パートナーと確保した同様の取引に基づくものです。

– 米国と日本は、国家安全保障に基づき、対内投資審査および対外投資からのリスクに対処するための包括的メカニズムの強化と適用にコミットしました。

– 日本は、シャドーフリートに関連する船舶を標的とし、米国およびG7パートナーと緊密に連携してシャドーフリート活動を妨害するための新しい制裁枠組みを追求します。

## 米国のエネルギー機会と安全保障の促進

米国と日本は、日本による米国産エネルギーの記録的購入を発表しました。

– 東京ガスとJERAは、それぞれ、アラスカで建設が提案されているパイプラインからのLNGオフテイクについて、グレンファーンとの意向書を発表しました。現在、日本企業の総オフテイクはプロジェクトの輸出能力の10%以上を占めています。

– JERAは、ルイジアナ州ヘインズビル・シェール盆地への15億ドルの投資を発表し、米国への総投資額は60億ドル以上となりました。

– グローバル・コール・セールス・グループLLCは、東北電力との間で、米国産石炭に関する1億ドル以上の価値がある複数年契約を発表しました。

– 米国は、透明で競争力のある調達プロセスを確保し、日本の原子力廃止措置市場への米国産業の参加に有意義な機会を創出するため、当局者、規制当局、公益事業者、サプライヤー間での早期関与を促進する日本の意向を歓迎しました。

## 抑止力の強化と不法薬物取引対策

トランプ大統領と高市首相は、日米防衛関係の深化と、世界的な合成薬物危機に対処する取り組みの拡大にコミットしました。

– 米国は、日本の防衛能力を大幅に増強するという約束を歓迎しました。この約束は、インド太平洋地域における抑止力を迅速に強化することにより、力による平和という日米同盟の目標を支援するものです。

– 米国は、日本のF-35戦闘機用の先進中距離空対空ミサイルの納入を加速し、第一列島線における抑止力および負担共有を強化しました。加速されたミサイル納入の第一陣は今週初めに行われました。

– 両国は、情報共有、リスクプロファイリング、運用上の協力を通じた協力強化に合意し、税関法違反の防止、調査、取締りのために税関相互支援協定(CMAA)を改正する計画を発表しました。

## 先進技術における米国のリーダーシップの促進

米国と日本は、科学技術における主要な協定にコミットしました。

– 米国と日本は、日米技術繁栄協定のためのMOCに署名しました。

– 両国は、科学、産業、社会における応用のための革新的研究の推進、イノベーション推進型AIポリシー枠組みの前進、輸出促進により、AI採用とイノベーションを加速するために協力します。

– 協力の追加分野には、研究セキュリティ、6G、医薬品およびバイオテクノロジーサプライチェーン、量子情報科学技術、核融合エネルギー、宇宙が含まれます。

– 両国は、機密データの保存と最新のサイバーセキュリティツールを可能にするクラウド技術の利点を確認しました。両国は、安全で主権的なクラウド開発のための米国の経験と知識の共有を含む、技術標準と要件に関する相互理解を深めるために、関連政府機関で構成される作業部会を立ち上げます。作業部会は、必要に応じて、日米企業を招き、その専門知識を求めます。

## ディールメーカー・イン・チーフ

本日の発表は、米国と日本の強固で永続的な関係を反映するとともに、米国民の経済的および国家安全保障上の利益を前進させるものです。

– トランプ大統領は、日本が米国の最も緊密な同盟国であり最も重要な貿易相手国の一つであることを認識しており、この関係を深めるために取り組んできました。

– 7月、トランプ大統領は日本との画期的な経済・貿易協定を発表し、日本は米国産業に5,500億ドルを投資し、基準15%の関税率を支払うことに合意しました。

– 9月、トランプ大統領は7月に発表されたこの枠組み協定を実施する大統領令に署名しました。

– 本日の日本との取引は、トランプ大統領の日本との過去の成功と日曜日のマレーシアとの合意に基づくものであり、米国民に利益をもたらす強力な取引を確保しています。

– このアジア歴訪により、トランプ大統領は、より広範な地域協力を促進し、同盟を強化し、米国の労働者のための経済的機会を拡大しています。​​​​​​​​​​​​​​​​

著者情報

赤坂国際法律会計事務所
弁護士 角田進二

ご相談はこちらから