AIと専門知が拓く経営の未来|投資家と対話する「言葉と数字」
2025.11.02UP!
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経営者の「知恵」が言葉になっていません。そのため、投資家や従業員に真意が伝わらないのです。この「もどかしさ」は、多くの企業が直面する課題です。
投資家は今、非財務情報(定性情報)を求めています。なぜなら、定性情報がどう定量的な成果(数字)に結びつくのか、明確な説明が必要だからです。本記事では、経営者の知恵を「言葉と数字」に変えるプロセスを解説します。さらに、ステークホルダーと対話し、経営判断の正当性(オーセンティシティ)を確保する方法も紹介します。
伊藤レポートとは投資家からの「宿題リスト」である
経済産業省が公表した「人材版伊藤レポート2.0」は、単なる報告書ではありません。むしろ、これは投資家が企業に求めている「説明の型」、すなわち「宿題リスト」と解釈すべきです。
実際、投資家は「人と戦略をどう結びつけ、持続的に価値を生み出すのか?」という、中長期的な企業価値向上に資する情報を求めています。特に機関投資家は、3〜10年の中長期視点で企業の成長性やサステナビリティへの取組みを判断します。
また、【コーポレートガバナンス・コード】(CGC)は、企業に対して以下の点を明確に説明するよう規定しています。
- 自社の資本コストを的確に把握すること。
- 収益力・資本効率等に関する目標を提示すること。
- 目標実現のため、人的資本への投資を含む経営資源の配分を具体的に説明すること。
投資家が知りたい4つの質問と「言葉と数字」による証明
では、投資家は具体的に何を知りたいのでしょうか。IR活動において企業が回答すべき4つの質問と、AIを活用した「言葉と数字」による証明方法を見ていきましょう。
① 戦略は現場に届いているか?
(実効性の証明)
投資家は「戦略を動かす人と数字」を見ています。だからこそ、AIを活用してKPIを通じた論理構造を整理し、開示することが重要です。
企業価値創造のKPIを分解し、現場独自のKPIと接続させる設計を意識すべきです。なぜなら、経営者は想いだけでなく、その前提を定量的に説明する責任があるからです。
② 知恵は組織に残っているか?
(形式知化と知識循環の証明)
ベテランの「勘」や「知恵が言葉になっていない」状態は、組織の持続性を脅かします。したがって、トップ人材の知見を形式知化し、知識循環を制度化する必要があります。
トップ人材の知見をAIで形式知化し、新人の受注率が1.5倍に改善した。
③ 投資は成果を出しているか?
(再現可能なプロセス効率の開示)
IT投資やM&Aがどのような成果を生んだのか、再現可能なプロセス効率として定量的に開示することが、投資家の信頼につながります。
特に中長期視点の投資家は、売上成長よりもROIC(投下資本利益率)など、資本コストを意識した効率的な経営を求めています。
IT投資の結果、商談時間が30%短縮し、顧客満足度が15%向上した。
④ 人への投資は利益を生んでいるか?
(実データによる経済的成果の関連性証明)
人への投資(コスト)が、経済的成果(利益)にどう結びつくかを実データで示すことが不可欠です。事実、【コーポレートガバナンス・コード】もこの説明責任を求めています。
投資家が重視するROEやROICの効率性に、人的資本への投資がどう貢献するかを論理的に説明しましょう。
従業員定着率が3ポイント上昇したことが、営業利益率の0.8ポイント上昇と関連している。
結論:AIは「宿題を解く道具」である
ここまで見てきたように、投資家からの「宿題」は、経営者の想いや知恵を、論理構造化し、検証し、投資家が理解できる「言葉と数字」に変換することを求めています。
そして、AIは、この「宿題」を解くための強力な「壁打ち相手」として機能します。結果として、AIを活用することで、経営者は自らの知恵を客観的に棚卸しし、投資家との対話に必要な論理とデータを整理できます。
同様に、IR担当者も、投資家との対話で得た「認識ギャップ」をAIで分析・共有し、改善サイクルを加速させることが可能です。このように、経営の言語化にAIを活用することは、企業価値向上に直結する重要なプロセスです。
