本記事では、Amazonによる買収断念から今回の決定に至った経緯、そして既存ユーザーへのサービス影響や株式の取り扱いについて、解説します。
iRobotがPiceaによる買収とチャプター11申請を発表
iRobot Corporationは、長期的な成長戦略の一環として、主要サプライヤーであるPicea(深圳PICEA Robotics等)による買収合意を発表しました。これに伴い、財務体質の抜本的な改善を目指し、あらかじめ再建計画をまとめた上で行う「プレパッケージ型」のチャプター11手続を開始します。
① 取引の概要
- 買収企業: Picea(主要サプライヤー)
- 手法: 株式の100%取得による完全子会社化
- 法的整理: チャプター11(民事再生法に相当)の活用
- 完了目処: 2026年2月までを予定
② ユーザーへの影響
- 製品サポート: 継続
- アプリ機能: 変更なし
- 保証対応: 通常通り維持
- 事業運営: 期間中も通常通り継続
【重要】株式は上場廃止・無価値化の見込み
投資家の方へ
今回の発表に伴い、以下の点が公表されています。株主にとっては厳しい結果となります。
- iRobot株はNASDAQから上場廃止となります。
- 再建計画が承認された場合、既存の普通株式は取り消し(無価値化)されます。
- 株主に対する投資回収(金銭的な分配)は行われない見通しです。
詳しくは、iRobot社が公開している公式開示資料(Stretto, Inc.)をご確認ください。
背景:Amazonによる買収断念が転機に
今回のPiceaによる救済合併に至った背景には、2024年初頭のAmazonによる買収計画の破談があります。この点、中国には多くの掃除ロボットメーカーがあり、EUの判断には疑念の残るものでした。
規制当局の壁と構造改革の遅れ
Amazonは当初、iRobotを最大17億ドルで買収する計画でした。しかし、欧州委員会(EU)などが「競争を阻害する懸念がある」として強硬な姿勢を示したため、両社は合意の上で契約を解消しました。
- 当時の打撃: 契約解除料としてAmazonから9,400万ドルが支払われましたが、iRobotはリストラ(全従業員の約30%削減)や製品ロードマップの縮小を余儀なくされました。
- CEOの交代: 共同創設者のコリン・アングル氏が退任し、経営体制の刷新が図られていました。
今後の見通し:Picea傘下での再出発
Piceaは既に2,000万台以上のロボット掃除機を製造してきた実績を持ち、iRobotのサプライチェーンの中核を担ってきました。
iRobotのゲイリー・コーエンCEOは声明で、「Piceaの製造・技術力と、iRobotのブランド・開発力を統合することで、長期的な未来を確保できる」と述べています。今後は非公開企業として、コスト構造を見直しつつ、スマートホーム市場での競争力回復を目指すことになります。


今回の「プレパッケージ型」チャプター11は、通常の破産とは異なり、早期再建を前提とした前向きな手続き事業価値を毀損せずに負債を整理する手法であり、ユーザーへの実害は最小限に抑えられる見込みです。