Sora 2の利用による著作権侵害とは?争点を弁護士が解説
2025.10.06UP!
Sora 2の利用による著作権侵害とは?争点を弁護士が解説
2025年10月、OpenAIは動画生成AI「Sora 2」に「カメオ機能」を追加しました。 この機能は、有名人の姿や声をAI動画に合成できるという画期的な仕組みです。 公開直後、世界中のユーザーが著名キャラクターを登場させた動画を次々に生成しました。
ピカチュウなどの人気キャラが登場する動画がSNSに拡散し、瞬く間に大きな話題となりました。 サム・アルトマンCEO自身が動画を作ったわけではありませんが、 彼の判断が著作権侵害の「引き金」となったことは否定できません。
事態を受け、OpenAIは10月4日に著作権コントロール機能の強化を発表しました。 この対応は「責任ある利用」への転換を示す動きでした。
Sora 2を巡る3つの法的争点
生成AIの工程は「学習」「生成」「出力」に分けられます。 日本の著作権法では、学習段階での利用は第30条の4により一定の合法性があります。 しかし問題は、最終段階である「出力」です。 ここでは3つの主要な争点を整理します。
争点①:「出力」は著作物の「複製」か
【結論】著名キャラクターを再現する行為は「複製」または「翻案」と見なされ、著作権侵害の可能性が高い。
ピカチュウなどの既存キャラをAIで再現する行為は、単なるデータ分析ではありません。 元の著作物に依拠しており、類似性が高い場合は「複製」または「翻案」に該当します。 これは著作権者のみが行える行為であり、無断使用は明確な侵害です。
争点②:開発者(OpenAI)は幇助犯となるか
【結論】開発者は直接の侵害者ではありません。ただし、侵害を予見しながら放置すれば「幇助犯」が成立する可能性があります。
この論点では、ファイル共有ソフト「Winny事件」が重要な先例です。 開発者は最終的に無罪でしたが、裁判所は幇助犯の成立要件を明確に示しました。
① 直接的認識: 侵害が行われると知りながら容認した場合。
② 間接的認識: 侵害の可能性が高いと予見し、放置した場合。
Sora 2のカメオ機能では、侵害の発生を予見できたと判断される可能性があります。 著名キャラを使う利用が多発すると想定できたためです。 OpenAIが利用規約で禁止していても、企業規模から見れば注意義務は重いと考えられます。
弁護士 角田の見解
Winny事件との大きな違いは、開発主体が個人ではなく世界的企業である点です。 OpenAIには、侵害を予防するフィルター技術を実装する社会的責任があります。 10月4日の発表は、その義務を果たす第一歩と評価できます。
争点③:SNS投稿は「公衆送信権の侵害」か
【結論】SNSに投稿すれば「私的利用」を超え、「公衆送信権」の侵害になります。
著作権法第30条が認める「私的複製」は、家庭内利用に限られます。 動画をSNSに投稿すると、不特定多数が視聴できる状態になります。 その時点で「公衆送信権」の侵害が成立します。
- 直接侵害者: 動画を投稿したユーザー
- 技術提供者: 利用を容易にしたOpenAI
この構造の中で、OpenAIはユーザーの行為を防ぐ「注意義務」を問われます。
結論:AI企業に求められる「予防的責任」
アルトマンCEOの声明は、単なる対応ではありません。 技術提供者として、侵害を予防する姿勢を明確に示した行動でした。 AI時代の企業には、事後対応ではなく予防的コンプライアンスが求められています。
Sora 2と著作権に関するQ&A
Q1. AIがアニメキャラを学習するのは違法ですか?
A1. 違法ではありません。 日本の著作権法第30条の4では、情報解析目的の学習は原則として許可されています。 ただし、出力が元作品に酷似していれば、別途侵害の可能性があります。
Q2. 家庭内で楽しむだけなら問題ないですか?
A2. はい。 動画を公開せず、自分や家族だけが視聴する場合は「私的複製」に該当します。 その範囲内であれば法的リスクは低いと考えられます。