向き合う老後プランニング(老後法務)
2015.04.20
ご自分が亡くなった後の事を考えたことはありますか?
最近では「終活」という言葉が聞かれますが、実践している方はまだまだ少ないように感じます。
弁護士として仕事をする中で、様々な相続案件を扱わせて戴いてきました。又、長くお付き合い戴いていたクライアントが、ある日突然亡くなったこともあります。そういった時、突然の死に直面し、生前にもっとよいアドバイスができたのではないかと後悔することもありました。
このような当職の経験から、お読み下さっている皆様が考えるきっかけになればと思い、この記事を書かせて戴きました。
◆「終活」の意義
人生の最期を迎える為の準備を行うのが「終活」です。誰もが健康で若々しくいたいものですし、自らの死について考えるのは愉快なことではないかもしれません。
しかし、人間は誰でも年を取ります。体の自由がきかなくなったり認知症を患うこともありますし、最終的には死を迎えます。このような場合、家族や親族を頼ることが多いかと思います。けれども、ご家族やご親族が小さなお子さんや病人を抱えていたらどうでしょうか。当職の相続手続き上の経験では、ご親族が様々な事情で、故人に関する手続などに対応できない場面に立ち会うことも少なくありませんでした。
老後プランニングとは、ご自身の為だけではなく、近しい方の為にもなるのではないでしょうか。
◆どのような最期を望むか
老後を考え始めるのに適切な年齢とは何歳ぐらいでしょうか。定年を迎えてから?ご両親を見送ってから?個人的な意見にはなりますが、50歳頃には徐々にプランを考え始めることをお勧めします。老後プランニングは、年齢を重ねるほどハードルが上がっていくというのが当職の印象です。
では、具体的には何を準備すればよいのでしょうか。
<ご生前>
・介護や医療など
いつまでも健康で長生きをするのが理想ですが、そうはいかない場合も訪れます。ご家族やご親族に介護を頼むことが可能であるか、業者や専門家に依頼をするのかを選択する必要があります。
・遺言書
ご自身の財産をどのように処分されるのかを決定しておくことで、相続の手続きはスムーズに運ぶようになります。市販の遺言書作成キットもありますし、弁護士や公証人などの専門家に依頼することもできます。
<ご逝去後>
・お葬式
「お葬式なんてしなくても…」と思う方もいらっしゃるかもしれません。けれども、考えてみてください。親しくしていたけれども数年来連絡を取っていなかったご友人が亡くなったとします。亡くなったことを時間が経ってから知ったとしたら、せめてお別れだけでもしたかったと寂しい気持ちにはならないでしょうか。宗派は関係なく、お葬式とは一つのけじめだと思います。久しく会えなかった方に、お別れを告げる機会だと考えてみては如何でしょうか。
さて、どのような葬儀がよいかを具体的に考えるに当たり、ご自身の死後では、コントロールできないと思う方もいるかもしれません。しかし、葬儀業者と事前に契約を結んでおくことは可能です。きちんと実行されるか不安がある場合は、現在はあまり一般的ではありませんが、弁護士やその他の専門家と相談することも可能です。
・形見分け
思い出の品を誰に遺すのかも考えておきたい点です。事前に形見分けの表を作っておくとよいでしょう。金銭的な価値が高いものの場合は、遺言書に記載しておくのも一つの手です。絵画や骨董品、その他の芸術作品等は非常に評価が難しく、相続争いになりやすいものです。
・掃除
形見分けの品以外に、日用品の片づけが必要な場合もあります。近場にご家族やご親族がいない場合などは、廃棄物処理業者等に依頼する必要があります。信頼できる業者を探すことが重要ですが、不安な場合は専門家に契約やその後の管理を任せることも考えてみましょう。
・お墓
お墓をどうするかも考えておきましょう。既にお墓がある場合は管理をどうするか、お墓がない方は新たに購入するか、それ以外の方法を選択するかを予め決めておくとよいでしょう。
◆海外に資産をお持ちの場合
仕事の都合で開設した海外の銀行口座や憧れの地に購入した別荘など、海外に資産をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
外国に存在している財産が遺産として残された場合、現地の法律により手続を行うことになります。国によっては、相続手続に1年2年かかる場合もあります。その場合、英語や現地の公用語でやり取りを行う必要が出てきます。
ご自身の身の回りに、このような場合の管理や手続が可能な方がいるかを確認してみましょう。もし管理できないと判断された場合、早期に処分された方がよい場合もあります。又、相続手続を行う際、金銭の方が手続が簡単に済むことも事実です。
◆専門家のサポート
巷には市販の老後プランニングの本が溢れています。当職もこういった本をクライアントにお渡しすることがあります。
弁護士として「終活」に関わる場合、遺言や遺産分割に対応することが多く、上に挙げたような事項をサポートしてくれる専門家はごくわずかでした。しかし、当職を頼ってきてくださったクライアントの方々には、悔いのない最期を迎えて戴きたいと思っております。悔いをなくす方法として、総合的な準備と専門家による実行のサポートも選択肢の一つに入れられるのではないでしょうか。
自らの大切なものを弁護士その他の専門家に委ねることが怖いと思われる方もいると思います。又、専門家の側でもこのような依頼はまだ一般的ではないため、戸惑う方も多いかもしれません。けれども、きっと力になってくれる専門家はいるはずです。
一人の専門家に依頼するのではなく、複数の専門家がチェックできるシステムを作ることも必要かもしれません。とはいえ、費用の掛かることなので、どこまで何を頼むかは難しい選択となります。その為にも、ご自分にどのようなサポートが必要なのかを考える必要があるでしょう。
◆人はつながりの中で生きている
人は一人では生きられません。人間は基本として他者とのつながりで生きています。では、死んでしまったらそのつながりの中から自分は消えてしまうのでしょうか。そうではないと思います。近しい人を亡くした方が、「胸に穴があいたようだ」と感情を表現することがあります。そのぽっかりと空いた穴が思い出で満たされるよう、最期の時の準備をしてみては如何でしょうか。
一人で悩まないで下さい。辛いことを一人で考えるのは人間には向いていません。現実と向き合うことは非常に勇気がいることですが、このブログが何かのきっかけになれば幸いです。
◆終わりに
弁護士という職業柄、多くの相続案件に関わってまいりました。亡くなった方や日本の今後のことを考えると胸が張り裂ける思いになります。
当職は、海外を含めて相続案件を取り扱っております。このような問題でお悩みの方のお力になりたいと思っております。ご興味をお持ちになりましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
その他の記事はブログをご覧ください。