イスラエル法シリーズ: 4 入国管理制度
2018.06.01
このイスラエル法シリーズ4では、イスラエルを訪問したり、繁栄する同国の経済システムの中で働いたりする日本人に関連がある、イスラエルの移民政策及び規則について言及する。
<<概要>>
M&A後などに、B-1ビザ(後に説明あり)でイスラエルに行くステップ(通常型)は以下の通り。
<入国前>
- 労働許可を貰う
- 暫定ビザプロセス(雇用者側)→ここで暫定ビザと招へい状を貰う
- 領事館に行く(被用者側)
<入国後>
- 空港の入国・人口・移民管理局(PIBA) → 滞在期間の延長
- 地元のPIBA → マルチプルビザへ変更(2営業日以内に)
<更新手続>
- 期間満了近くにて更新手続きへ
日本人に対するビザの免除
イスラエルへの外国人訪問者はビザ免除国からの来訪者でない限り、入国に際してビザの取得を必要とする。イスラエルは、多くの国々との間に短期滞在者に関するビザ免除協定を締結している。日本は1971年の合意に従い上記のビザ免除国であり、依って通常の日本旅券所持者は滞在期間が90日以内であれば、ビザなしでイスラエルを訪問することができる。
このため、短期出張や投資目的でリサーチを行う人の国籍がビザ免除国の場合、定期的に訪問にビザを取得せずとも最大3ヶ月滞在することができる。また、ビザはイスラエル国内の移民局に申請して延長することも可能である。
就労ビザ取得要件
一般に、訪問目的が、会議に出席したり講演やセミナーなどのイベントに参加したりするなどの「ビジネスミーティング」と考えられる活動である場合には、就労ビザは必要ない。しかし、業務により近い活動は、時間の長さにかかわらず就労ビザが必要となる。例えば、機械の操作、修理、その他一般的に労働者が行う作業の遂行である。
近代的な職場の多様性を考えると、いくつかの活動はグレーゾーンとなる。一般的に、滞在期間によって判断される。しかし、長期かつ断続的な滞在の場合、滞在目的は「ビジネスミーティング」ではなく「業務」であるとみなされやすい。短期滞在は対象とする活動により「業務」と判断される。
報酬がどこから支払われているかは、就労ビザの必要性を検討する際の判断要素として考慮されない。
外国人 – イスラエルでの就労に必要なB-1ビザ
B-1ビザは、外国人がイスラエルにおいて雇用主の下で働くことを許可する就労ビザである。ビザの有効期間は通常12ヵ月で、1年ずつ、最長5年間まで延長することがでる。期間の延長は関係当局の裁量に委ねられている。
一般的なタイプのB-1ビザ申請は、外国人専門家B-1ビザだが、このビザの取得には独特な資格要件が求められている。つまり、その外国人はビザ申請者(イスラエル国内の雇用主)が提供するサービスに関して、イスラエルに存在しない高度な専門知識または独特で必要不可欠な知識を有していることを証明する必要がある。さらに、彼らの毎月の給与は、イスラエルの平均給与の2倍(月額約5,500 USドル)以上でなければならない。
イスラエルにおける外国人専門家の雇用は、労働協約(該当する場合)、および拡張命令(イスラエル人労働者全般に対する一定の労働協約の規定を拡大する法的な命令)を含むイスラエルの労働法規の対象となる。
イスラエルには、外国人雇用についてのさまざまな点について規制する多くの法令が存在する。これらの法令は、外国人専門家の雇用者に対して、例えば適切な医療保険を外国人専門家に提供する義務などの追加的義務を課すものである。詳細はそれぞれ適用となる法令に記載されている。ただし、外国人専門家が次のいずれかの職位を有する場合は、外国人専門家の雇用主の上記義務を免除される。(a)イスラエル会社における2名の最上級管理職の内の1名。(b)外国法人の代表者。(c)個人的な信頼を必要とする職位の上級職。
労働許可と就労ビザの申請手続
移民規制は長年にわたり大きな変化をし続けている。したがって、最新の規制要求を取得するために常に専門家に相談することが賢明である。
現時点では、基本原則として、ビザ申請者はその職位に適したイスラエル人がいないことを証明しなければならない。ビザ申請書には、提示の給与額、専門的な資格、および応募者の経歴など、この職位に関する情報も提供する必要がある。
B-1 就労ビザ取得のための基本的手順
<入国前>
Ⅰ 雇用主からの内務省が管轄する労働許可ユニットへの申請
労働許可ユニットは雇用主が外国人従業員を雇用することを許可する権限を与えられている。この第1段階では、必要書類のほとんどは雇用主側が提出すべきものとなる。 雇用主が雇用しようとする外国人従業員側では、パスポート最初のページのコピー、履歴書、学位、卒業証書などの個人情報を提供することが必要である。 このプロセスには、申請後8〜12週間かかることがある。 許可された場合、労働許可証は直接本人が内務省から受領することになる。
労働許可ユニットに提出が必要な書類は以下の通り。
① 外国人専門家を雇用するための許可証発行申請フォーム(すべての必要事項が記入されたもの)
② 雇用主が記入し、イスラエルの弁護士によって確認された供述フォーム。 別途、申請フォームの署名者が正式な権限を持つ雇用主の代表者であることについての弁護士または監査人による証明書。
この供述書がイスラエル国外で署名される場合は、その供述書は(i)イスラエル領事の面前で署名(領事公証)か、(ii)外国人(イスラエル人ではない)公証人の面前で署名が(アポスティーユ証明必要)必要である。
③ 外国人従業員の教育と経歴を証明する卒業証書や証明書の写し。卒業証書がヘブライ語または英語でない場合、ヘブライ語または英語に翻訳の上、公証人の認証を得る必要がある。 学問的教育を必要としない職業については、外国人従業員を自国で従事させた民間仲介会社の仲介免許証の承認済の写し、その雇用が合法的に行われたことについての自国の労働局からの確認書類。
④ 場合によって、雇用者を特定するための詳細情報を、企業登記簿、パートナーシップ登記簿または事業登記簿からプリントアウトしたもの。
⑤ 申請日以前3ヶ月の国民保険局フォーム102の写し。
⑥ 外国人従業員のパスポート最初のページのコピー。
⑦ 現在会社が積極的に事業を行っているという会計士の確認書
⑧ 外国人従業員の履歴書
⑨ 申請会社の概要、同会社のイスラエルにおける活動、当該外国人従業員を雇用する理由、外国人従業員の能力、即ち学歴及び経験
⑩ 適正に署名された、会社から法律事務所への委任状(会社が法定代理人経由での申請を選択した場合)
⑪ 申請手数料
Ⅱ 入国・人口・移民管理局(PIBA)への提出
雇用主は、外国人従業員を招聘した当事者としてPIBA支部に外国人従業員が就労目的で入国ビザを受領することを申請する。 新規発行ビザの場合には、外国人従業員は申請段階においてイスラエル国外にいる必要がある。
PIBA支部に提出する申請書に添付する必要がある書類は以下のとおり。
① イスラエル入国ビザ申請フォーム。これには外国人従業員に関する詳細を記入し、外国人従業員と会社が署名し、会社印を捺印することが必要である。
② 在留許可延長/査証資格変更の申請フォーム。これには外国人従業員に関する詳細の記載及び外国人従業員本人が署名する必要がある。
③ 外国人従業員のパスポート最初のページのコピー
④ 労働許可ユニットからの許可証のコピー
⑤ 外国人従業員と会社からの法律事務所宛て署名済み委任状
⑥ 会社概要、同会社のイスラエルにおける活動、当該外国人従業員を雇用する理由、外国人従業員の能力(学歴及び経験)を記した法律事務所からの書簡
⑦ 申請手数料
イスラエルに登記されている現地法人または支店だけでなく、イスラエルに子会社または支店が登記されていない外国会社も同じく、外国人の雇用を申請できることは留意すべき点である。
Ⅲ 領事館への申請
同ビザ(通常は1ヶ月の就労ビザ)のPIBA支部による許可がおりたら、申請者である外国人従業員の母国にある、イスラエル領事館の代表に招へい状が送られる。 招へい状は3ヶ月間有効である。
その後、外国人従業員はビザに関して領事館と連絡をとることができるようになる。 領事館は、ビザの許可にあたって、確認する要件リストを発行する。 要件リストは領事館によって異なるが、一般的に領事館では以下の書類が必要である。
① 無犯罪証明書
② 在外大使館公認の診療所や病院で行われた健康診断の証明書(特に、結核、肝炎、エイズ検査において正常な結果を証明しなければならない)および一般的な血液検査の結果
③ イスラエル内務省の許可証
④ 入国ビザ申請フォーム
⑤ パスポート用写真2枚
⑥ 雇用主からの雇用確認書簡
⑦ 入国フライトスケジュール
⑧ パスポート原本
⑨ 領事館で指紋の採取と写真撮影の実施
パスポートは残りの有効期間が最低2年間あり、空白のビザページがPIBA 支部のスタンプ用に最低3ページ残っていること。
<入国後>
Ⅳ 延長手続(空港)
テルアビブのベン・グリオン国際空港に到着すると、外国人従業員は空港のPIBA支局に行き、スタンプをもらい、雇用ビザを労働許可ユニットが推奨する最長期間(通常12ヶ月間)まで延長する。このサービスは、ベン・グリオン国際空港のPIBA支局で365日24時間(金曜日の夜と日曜の朝を除く)提供されている。
Ⅴ ローカルでの手続
また、PIBA支局で、外国人従業員がイスラエルを離れるときに雇用ビザが失効しないために必要な、マルチエントリービザを申請する必要がある。また、地元のPIBA支部からの労働許可を入国後2営業日以内に取得する必要があることに留意すべきである。
同手続きに必要とするものは以下のとおり。
① 当該外国人専門家と雇用主またはその代理人の出頭
② ビザ資格変更申請書
③ 外国人専門家のパスポート(有効期間、残り6ヶ月以上)
④ 就労ビザのコピー
⑤ 所要手数料支払い
<更新手続>
就労ビザ更新の場合(ビザが有効期間内の場合)、外国人従業員はイスラエル滞在中に就労ビザを延長することができる。 この手続きに必要なのは、PIBA支局を1回訪問することだけである。
付随情報
45日間就労ビザ(急速手続)
入国日から毎年45日まで、外国の専門家がイスラエルに来ることを会社が申請できる迅速な手続き(6営業日以内に処理される)がある。 この手続きは、ビザ免除国(日本を含む)リストにのみ利用が可能である。
このビザは毎年45日間に制限されている。それは譲渡不可能かつ延長不可能であり、イスラエルへの再入国時にのみ変更することができる。このビザは、特殊で一時的な職務を遂行する外国人専門家に適している。申請が拒否され、通常手続きに移されることもある。 そのような場合には、追加資料や申請手数料が必要となることがある。
2018年の「ハイテク企業」優遇措置
2018年、イスラエル政府は、「ハイテク企業」に雇用された外国人専門家にビザ申請の処理時間を短縮する新しい規則を導入した。 企業が新規則によって定められた「ハイテク企業」の基準に合致した場合、その外国人従業員(特定の基準に合致している場合)は迅速な手続きの恩恵を受けることができる。
この措置には以下の3つの場合がある。
① 外国人専門家の申請ついては、最長1年間の労働許可が6営業日以内に処理される。
② 外国の大学を卒業した者の申請については、30営業日以内に処理される。
③ 90日を超える外国人専門家とその配偶者の労働許可については、21営業日以内に処理される。
この申請に必要な資料については、それぞれの状況によって異なる要件がある。「ハイテク企業」とみなされる基準および迅速な手続きの基準が適用されるための詳細については、別途お問い合わせください。
この記事を作成するにあたって、Herzog Fox&Neeman(www.hfn.co.il)のGilad Majerowicz氏とRoy Hayun氏から頂いたご協力とご支援に感謝します。