米国50%ルール(アフィリエイト・ルール)の罰則とは?違反時のリスクを解説
2025.11.01UP!
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米国の「50%ルール(アフィリエイト・ルール)」の罰則がどれほど厳しいかご存知ですか?「知らなかった」では済まされない重い制裁が、日本企業にも適用されるリスクが高まっています。コンプライアンス違反は、高額な罰金だけでなく、事業の存続自体を脅かす可能性があります。この記事では、50%ルール違反時に科される「民事罰」「刑事罰」「行政処分」のリスクについて、具体的な罰金額や取引停止(DPL)の影響を解説します。
50%ルール違反の罰則:3つの重いリスク
この「50%ルール」に違反すると、【EAR】(輸出管理規則)違反として扱われます。その結果、【ECRA】(輸出管理改革法)や【IEEPA】(国際緊急経済権限法)に基づき、重大な「①民事罰」「②刑事罰」「③行政処分」の対象となります。特に、Entity List関連の要件は「厳格責任(Strict Liability)」を適用します。そのため、「知らなかった」という抗弁は認められません。意図しない違反であっても、重い制裁を科されるリスクがあります。
Penaltiesに関する記載
① 民事罰 (Civil Penalties)
民事罰は、金銭的な制裁(制裁金や過料)です。これは、過失や意図しない違反(厳格責任)に対しても行政機関(BIS)が適用する可能性があり、最も現実的なリスクと言えます。懲役刑はありませんが、法令遵守の抑止力として、非常に高額な支払いを命じられることがあります。
- 罰金額(2025年時点の例):個人・法人に対し、37万7700ドル以下(【IEEPA】に基づく場合)、または取引額の2倍のいずれか高額の罰金。
(罰金額はインフレにより毎年調整されます) - 特徴:「違反1件あたり」で計算されます。そのため、複数の取引で違反が発覚した場合、罰金額は甚大なものになります。
早期に自発的な自己開示(Voluntary Self-Disclosure)緩和要素となります。しかし、輸出執行部(OEE)が調査を開始する以前に行われることが条件となります。民事罰については、過失や意図的でない違反に対しても適用される可能性があります
② 刑事罰 (Criminal Penalties)
刑事罰は、規制を「故意に(willfully)」違反したと判断された場合に適用される、最も重い罰則です。この場合、刑事責任を問われます。
- 法人への罰金:違反1件あたり最大100万ドル、または(再)輸出額の5倍のいずれか高額。
- 個人への罰則:最大20年の懲役、および/または100万ドル以下の罰金。経営者や担当者個人の責任も厳しく追及されます。
③ 行政処分 (Administrative Sanctions)
罰金以上に、企業の存続に直結する最も深刻な制裁が行政処分です。最も重い処分は「輸出権限の剥奪(Denial of Export Privileges)」です。
この処分を受けると、BISの「Denied Persons List (DPL)」に企業名が掲載されます。その結果、EARの対象となるすべての品目(【EAR99】品目を含む)の取引が一定期間(または永久に)禁止されます。米国製品や技術の調達・利用ができなくなります。
罰則による実務的影響:AWS排除や取引停止は起きるか?
AWS(クラウドサービス)からの排除や米国企業との取引禁止は、この行政制裁がもたらす最も深刻な実務的影響に該当します。
輸出特権剥奪(DPL)による米国取引の全面的禁止
DPL(取引禁止者リスト)に掲載されると、米国企業とのほとんどすべての取引が停止します。米国以外の国の企業であっても、米国から貨物や技術を調達することが不可能になります。事業活動の多くを米国市場や技術に依存する企業にとって、その影響は極めて重大であり、存続に関わる事態を招きます。DPLの制裁は、米国からの輸出だけでなく、米国以外の国に所在する企業との間での米国原産の貨物、ソフトウェア、技術の取引にも適用されます
AWSなどクラウドサービスへの影響
AWSのようなクラウドサービスは、米国企業(アマゾン)が提供しています。そのサービス基盤には米国原産の技術やソフトウェアが含まれます。DPLに掲載された企業は、米国原産の技術やソフトウェアを取り扱うことが禁止されます。したがって、AWSは【EAR】を遵守する義務に基づき、当該企業に対するサービス提供を直ちに停止することが求められると解されます。
OFAC(財務省)の制裁ルールとの連携
50%ルールは、BISだけでなく【OFAC】(財務省外国資産管理局)が管理するSDN(特別指定国民)リストにも関連します。もし違反がSDN関連の取引に起因する場合、BISと【OFAC】の両方から制裁を課される可能性があります。その結果、金融取引やサービス提供が包括的に停止されます。
なお、規則発効時に付与された60日間の**暫定一般ライセンス(TGL)**は、Entity ListやMEU Listの関連会社との特定の取引に猶予を与えましたが、SDN関連のPart 744.8に基づくアフィリエイト・ルール適用対象者との取引にはTGLは利用できません
違反を防ぐために:EAR99品目も対象
企業は、取引相手の所有構造が不明確でリスクが高いと判断した場合(Red Flag 29)、コンプライアンス上の義務として取引を停止するか、ライセンスを申請する必要があります。
従来の輸出管理において、EAR99品目(Commerce Control List (CCL)に具体的に記載されていない一般的な民生品、部品、消耗品など)は、特定の禁輸国や懸念用途を除き、ライセンス不要の「安全地帯(safe harbor)」と見なされてきました
しかし、アフィリエイト・ルールは、この常識を完全に覆しました。アフィリエイト・ルールの対象企業に輸出する際にはライセンスが必要となります。この審査方針は多くの場合「原則不許可(presumption of denial)」であり、事実上、取引が不可能になることを意味します。例えば、EAR99のファスナーを欧州のディストリビューターへ出荷する場合でも、そのディストリビューターが中国のEntity List企業の55%子会社であれば、ライセンスが必要となり、取得は困難になります。
Q1: 50%ルール(アフィリエイト・ルール)とは何ですか? A1: 米国輸出管理規則(EAR)の一つで、Entity Listなど規制対象者が50%以上の持分を持つ(または支配する)関連会社(アフィリエイト)も、規制対象者本人と同様に取り扱うルールです。これにより、従来安全とされたEAR99品目の取引でもライセンスが必要になる場合があります。
Q2: 50%ルール違反の罰金はいくらですか? A2: 違反時の民事罰は、2025年時点で1件あたり最大約37万ドル(または取引額の2倍)と非常に高額です。故意の違反と認定されれば、刑事罰として法人に最大100万ドル、個人にも罰金や懲役刑が科される可能性があります。
Q3: 50%ルール違反で「知らなかった」は通用しますか? A3: 通用しません。Entity List関連の要件には「厳格責任(Strict Liability)」が適用されるため、意図しない過失による違反であっても罰則(特に民事罰)の対象となります。取引先の所有構造の確認(デューデリジェンス)が不可欠です。
Q4: DPL(取引禁止者リスト)に載るとどうなりますか? A4: DPL(Denied Persons List)に掲載されると、EAR対象品目(EAR99含む)の輸出入や関連取引が全面的に禁止されます。これにより、米国企業(AWSなどクラウドサービス含む)との取引が停止に追い込まれ、事業継続に深刻な影響が出ます
