赤坂国際会計事務所

必読:商務部公告2025年第61号:対外関連レアアース物項への輸出管理実施に関する決定の公布3 附件2:『コンプライアンス通知書』指針

2025.10.27UP!

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1. サプライチェーン全体への義務の連鎖

この制度は、中国のレアアース管理をグローバルサプライチェーン全体に浸透させる仕組みです。

連鎖の流れ(例):

中国レアアース精錬業者
    ↓【通知書①:100%】
日本の磁石メーカー(例:TDK)
    ↓【通知書②:例えば5%】
ドイツの産業ロボットメーカー(例:KUKA)
    ↓【通知書③:例えば0.15%】
米国の自動車工場(例:Ford)
    ↓【通知書④:例えば0.12%】
メキシコの最終消費者

各段階で:

  • 取引ごとに通知書を発行する義務
  • 0.1%ルールの計算・確認義務
  • 次の買い手への教育義務

2. 「価値占有率」計算の実務的困難

ケース1:直接購入(単純)

例:日本の自動車メーカーが中国から永久磁石を直接購入

項目 金額
永久磁石(Dy添加NdFeB)購入価格 $100
EVモーター製造コスト(人件費・組立費等含む) $9,900
完成モーター価格 $10,000

価値占有率:$100 / $10,000 = 1.0%0.1%超のため規制対象

ケース2:間接購入・多段階サプライチェーン(複雑)

例:欧州の医療機器メーカーがMRI装置を製造

段階 部品 購入元 中国産レアアース価値 製品価格 占有率
1 永久磁石 日本メーカー $5,000
2 磁気ベアリング 韓国メーカー (上記磁石含む) $50,000 10%
3 MRIスキャナー ドイツメーカー (上記ベアリング含む) $2,000,000 0.0025%?

問題点

  • 多段階のサプライチェーンで、最終製品での占有率計算が極めて困難
  • 各段階で加工コストが加算され、占有率は逓減
  • しかし**「独立して使用可能な各物項」ごとに0.1%を判定**する必要

MRIスキャナー全体では0.0025%だが、磁気ベアリング単体では10%なので規制対象?

3. 「独立して使用可能な物項」の解釈問題

公告の文言:

「每个可独立使用物项中中国产受管制稀土成分价值占比高于0.1%」

「独立して使用可能な各物項中の中国産管制対象レアアース成分の価値占有率が0.1%を超える」

解釈の曖昧性:

例:スマートフォン

部品 中国産レアアース含有 独立使用可能?
振動モーター(NdFeB磁石) あり(価値占有率5%) No(単独では無意味)
カメラモジュール(VCM使用) あり(価値占有率3%) Yes?(単体でも動作)
スピーカー(NdFeB磁石) あり(価値占有率4%) Yes?(単体でも動作)
完成スマートフォン 上記全て含む Yes

問題:

  • 「独立使用可能」の定義が不明確
  • カメラモジュールやスピーカーは単体で規制対象か?
  • それとも完成品全体で計算するのか?

中国商務部の裁量次第で解釈が変わる可能性

4. デューデリジェンス義務の実務的負担

通知書発行は義務免除にならない

公告の文言:

「出具本《合规告知书》不免除各方按照中国出口管制法律法规规定开展必要尽职调查的义务」 「本『コンプライアンス通知書』の発行は、各当事者が中国の輸出管理法令の規定に基づいて必要なデューデリジェンスを実施する義務を免除するものではない」

実務上必要なデューデリジェンス:

  1. 原産地追跡
    • 全ての部品・材料のレアアース含有状況を確認
    • サプライヤーからの証明書・分析証明書取得
    • 複数階層のサプライチェーンの可視化
  2. 価値計算
    • 各段階での中国産レアアースの価値計算
    • 為替変動、市況変動の考慮
    • 独立監査人による検証
  3. 最終用途確認
    • 次の買い手の最終用途確認
    • 軍事転用リスク評価
    • エンドユーザー証明書の取得
  4. 記録保管
    • 全ての取引記録を5年間保管(中国輸出管理法の一般原則)
    • 中国商務部からの照会に対応できる体制

5. 違反時のリスク

中国側のペナルティ(推定)

中国輸出管理法に基づく制裁:

  • 罰金:物品価値の5〜20%
  • 輸出権停止:一定期間、中国からの輸入・中国への輸出禁止
  • ブラックリスト掲載:「不可靠実体清単(Unreliable Entity List)」への掲載
  • 刑事責任:悪質な場合、法定代表者の刑事訴追

Q1: 中国レアアース新輸出規制の「0.1%ルール」とは何ですか? A1: 製品に含まれる中国産レアアースの価値が、独立して使用可能な物項の価格の0.1%を超える場合、規制対象となるルールです。多段階のサプライチェーンでは計算が極めて困難で、解釈も曖昧な点が実務上の大きな課題です。

Q2: この規制は中国からの直接輸入者だけが対象ですか? A2: いいえ。規制は「コンプライアンス通知書」を通じて、サプライチェーン全体(例:中国→日本→ドイツ→米国)に連鎖します。最終製品に近い企業でも、上流から通知書を受け取った場合、規制遵守と次の買い手への通知義務を負います。

Q3: 『コンプライアンス通知書』を発行すれば、義務は完了しますか? A3: いいえ。通知書の発行は、中国輸出管理法に基づくデューデリジェンス(最終用途の確認、原産地追跡、価値計算など)の義務を免除しません。企業は別途、厳格な管理体制を構築し、記録を保管する実務的負担を負います。

Q4: 「独立して使用可能な物項」の解釈が曖昧な点のリスクとは何ですか? A4: 例えばスマートフォン全体では0.1%以下でも、部品の「カメラモジュール」単体で0.1%を超えると規制対象になる可能性があります。「独立使用可能」の定義が不明確なため、当局の裁量次第で規制範囲が変わり、予期せぬ違反を問われるリスクがあります。

附件2:『コンプライアンス通知書』指針雑訳

中国国内の輸出経営者が本公告附件1第一部分に列挙されている管制物項を境外に輸出する場合、または境外特定輸出経営者が本公告の管制を受けるいずれかの物項を第三国もしくは地域に輸出する場合(または国内移転を行う場合)、次の受領者、輸入業者、または最終ユーザーに『コンプライアンス通知書』を発行しなければならない。同時に、次の受領者、輸入業者、または最終ユーザーも、中国国内の輸出経営者または上流の境外特定輸出経営者に対して、本通知書の提供を要求することができる。本『コンプライアンス通知書』の発行は、各当事者が中国の輸出管理法令の規定に基づいて必要なデューデリジェンスを実施する義務を免除するものではない。


『コンプライアンス通知書』雛形

【受領者/輸入業者/次の最終ユーザー】様:

弊社が御社に輸出/移転する**【物項名称等の情報】には、中国産の管制対象レアアース成分が含まれており、価値占有率は【 】%**です。中国商務部公告2025年第61号に基づき、以下の規定を遵守してください:

(一)第三国・地域への輸出時の許可取得義務

中国以外の他の国家および地域に物項を輸出する際は、中国商務部が発行する輸出許可を取得しなければならない。

(二)加工品・組立品への適用(0.1%ルールの継承)

本物項を原料(部品、組立品)として他の物項を製造する場合、独立して使用可能な各物項中の中国産管制対象レアアース成分の価値占有率が0.1%を超えるときは、製造された物項は中国商務部公告2025年第61号の管制対象物項に該当し、中国以外の他の国家および地域に輸出する際は、中国商務部が発行する輸出許可を取得しなければならない。

(三)コンプライアンス通知書の伝達義務

次の受領者/輸入業者/最終ユーザーに対して、本通知書の(一)(二)に関する物項を移転または提供する場合は、中国商務部公告2025年第61号の要求に従って作成された『コンプライアンス通知書』を併せて提供しなければならない。


【境外特定輸出経営者名称/中国国内輸出経営者名称】

【印章または法定代表者署名】

【日付】


注記: 中国国内の輸出経営者が本公告附件1第一部分に列挙されている管制物項を境外に輸出する場合、冒頭の「価値占有率」には「100%」と記入する。


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