赤坂国際会計事務所

予測不可能な危機に関してのマネジメント(上場会社、非上場会社、宗教法人その他)

多くの企業が危機対応において、一つの重大な誤解をしています。それは「自社のルールと常識で解決できる」と信じ、平時と同じように動き続けてしまうことです。しかし、危機の多くは社内の常識と社会の認識のズレから発生します。この記事では、危機管理の専門家が、有事の際に取るべき正しい分析手法と、最悪の事態を乗り越えるための具体的なアプローチを解説します。

危機管理で陥りがちな3つの誤解

有事の際、冷静な判断を妨げる典型的な思い込みがあります。これらは初動のミスにつながり、事態を悪化させる原因となります。まずは、多くの組織が見過ごしてしまう3つのポイントを理解することが重要です。

誤解①:問題は「リスクマネジメント」である

事故や不祥事が発生した際、対外的に「リスクマネジメント」という言葉を使うのは避けるべきです。社会やメディアは、その問題を「コンプライアンス(法令遵守)が疑われる事案」として見ています。問題を矮小化していると受け取られかねないため、対外的には「コンプライアンス」の観点から説明責任を果たす姿勢が求められます。

誤解②:「危機管理対策委員会」を設置すればよい

「危機管理対策委員会」といった組織名を公表することは、かえって事態を煽り、社会の不安を増長させる可能性があります。危機はあくまで組織内部の問題であり、外部にとっては法や社会規範が守られているかどうかが最大の関心事です。物々しい組織名は、状況を正確に把握できていないという印象を与えかねません。

誤解③:自分たちは「被害者」である

社会的な影響が大きい事件では、当事者が「自分たちも被害者だ」と過度にアピールすることで、より厳しいバッシングを受けるケースが後を絶ちません。たとえ事実であったとしても、まずは社会に与えた影響に対する責任を真摯に受け止める姿勢が不可欠です。この客観的な視点を保つためには、第三者である専門家の関与が極めて重要になります。

危機発生時に専門家が行う分析のフレームワーク

問題を正確に把握し、適切な打ち手を導き出すためには、感情論を排した冷静な分析が不可欠です。弊事務所では、まず原因の切り分けを行い、そこから最悪の事態を想定することで、取るべきアクションを具体化していきます。

分析①:原因の切り分け

まず、問題がどこから発生しているのかを分析します。原因によって対応策は全く異なります。

分析対象 特徴 初期対応のポイント
内部分裂 組織内の対立や派閥争いが原因。情報漏洩や内部告発のリスクが極めて高い。 組織の統率を最優先。迅速な意思決定と情報統制が求められる。放置すれば組織は崩壊に至る。
内部と外部の軋轢 自社の常識と社会通念(メディア、政府、消費者団体など)とのズレが原因。 外部の視点を理解し、独善的な対応を避ける。広聴・広報活動が重要になる。
表1:危機の原因分析

分析②:最悪の事態を想定する

次に、現状から起こりうる最悪の事態を具体的に想定します。これを怠ることが、後手に回る最大の原因です。「希望的観測」を捨て、考えうる最悪のシナリオから逆算して、今打つべき手を考えます。このプロセスにより、精神的な動揺を抑え、冷静な対応を維持しやすくなります。

【専門家の視点】
危機管理の失敗例の多くは、「まさか、そこまではならないだろう」という楽観論から始まります。あらゆる可能性を洗い出し、最悪のシナリオに備えることこそが、結果的に被害を最小限に抑える唯一の道です。

専門家が実践する具体的な危機管理アプローチ

冷静な分析の後は、具体的なアクションプランの策定と実行に移ります。弊事務所では、法律論に終始しない、多角的かつ実践的なアプローチで社会の鎮静化を目指します。

① 逆算思考のアクションプラン

危機対応において、時系列で物事を考えるのは危険です。まず、事態収束のゴール(Xデー)を定め、そこから逆算してタスクを洗い出します。Excelやタスク管理ツールを用いて、「いつまでに」「誰が」「何を」すべきかを明確にすることで、混乱状況の中でも着実に前進することが可能になります。

② 多角的な専門家チームの組成

弁護士だけの対応は、法的側面は抑えられても、世論や社会感情を見誤り、かえって炎上を招くリスクがあります。法律問題に見える事象でも、その根幹には広報(PR)や組織統治(ガバナンス)の問題が潜んでいることが少なくありません。PR専門家など他業種のプロと連携し、リスクを多角的に可視化します。

③ 適度に休息をとり、冷静な判断を保つ

危機対応の当事者は、極度の緊張状態で心身ともに疲弊します。睡眠不足や過労は判断力を鈍らせ、次なるミスを誘発します。意識的に休息を取ることも、危機管理における重要なタスクの一つです。冷静な判断力なくして、この難局を乗り越えることはできません。

まとめ:専門家と共に最悪の事態を乗り越える

危機管理は、社内の論理や精神論で乗り越えられるものではありません。客観的な分析、最悪を想定した逆算思考、そして多角的な専門家の知見が不可欠です。甘い言葉をかけるだけの専門家ではなく、厳しい事実を客観的に指摘し、淡々と実行を支援できるパートナーを選ぶべきです。

弊事務所は、貴社が陥っている危機について即座に対応し、最悪の事態を回避するためのノウハウと胆力を持っております。お一人で悩まず、まずはご相談ください。

著者情報

赤坂国際法律会計事務所
弁護士 角田進二