赤坂国際会計事務所

アジャイル開発における受注者の裁判リスクと実務上の備え3 キックオフ

2025.09.15

1.開発体制の取り決め

責任の所在が炎上を防ぐ

システム開発では責任者の明確化が最も重要です。報告体制はプロジェクトの成否を分けます。誰が誰にどう報告するかは、開発業者の規律になります。この取り決めが曖昧だと問題が起きます。「俺は聞いていない」という主張が必ず出てくるのです。特にプロダクトオーナーからこの言葉が出たら危険です。それは関係悪化に繋がる「炎上」のサインでしょう。

発注者の「他の業者に任せている」という言葉。この指示には特に注意が必要です。これは責任の所在を曖昧にする言い方です。後で「聞いていない」と言うための逃げ道になり得ます。多くの場合、その業者は発注者に良い顔をします。しかし自社の開発を優先し、調整には非協力的です。結果、開発業者からの報告はオーナーに届きません。そして、見事にはしごを外される事態になるのです。

議事録と記録で身を守る

キックオフミーティングは非常に重要です。契約書以上に、実質的な力関係や方針が決まる場となります。契約書の内容だけを信じ、オペレーションを軽視するのは危険です。

オペレーションでは客観的な記録が重要です。「何がどう決まったか」を議事録や録画で残しましょう。基本設計の会社は発言力が強くなりがちです。その指示を鵜呑みにすると後で責任を押し付けられます。必ず記録に残すことが大切です。

「任せる」と言われた後に「聞いていない」と主張される。そんな時は記録を基に対応できます。「事前に報告し、受領の確認も得ています」と伝えましょう。こうした自己防衛策が、紛争を未然に防ぎます。無理な要求にも記録を残しながら丁寧に対応してください。それが万が一の際の重要な資料となります。

2.スケジュールの管理

期待値調整とスコープの明確化

マネージャーは発注者の圧力に屈してはいけません。安易な妥協は、開発メンバーの疲弊を招きます。大切なのは「期待値の調整」です。作業量が増えれば納期と費用は変動します。その状況を可視化し、都度合意を形成してください。このプロセスがプロジェクトを安定させます。

プロジェクトでは仕様の抜け漏れが必ず発生します。そして責任の押し付け合いが起こりがちです。これを防ぐには、議事録への的確な記載が有効です。例えば「本件は調査に15日ほど要します」と記載します。見解と今後のアクションを明確にしましょう。抜け漏れが見つかれば、他のリスクも指摘してください。リスクを共有する姿勢が重要です。

テスト仕様と役割分担の重要性

キックオフの段階でテストの合意は必須です。「誰が」「どんな仕様で」行うのかを明確にしましょう。終盤にテスト仕様の策定を始めると問題が多発します。30日以上の追加期間が必要になることも珍しくありません。

開発とスケジュール管理の担当者は分けるべきです。スケジュール担当者はチームのバッファーとなります。精神的なケアも担える体制が理想です。また、発注者から資料が提供されない場合もあります。その際は遅延を指摘し、納期延長の理解を得る交渉も必要です。

裁判を避けるための交渉術

プロジェクトログへの記載だけでは不十分です。書面として「伝えた」という証拠を残すことが重要です。このような動きは発注者に嫌われるかもしれません。しかし裁判になれば、もっと厳しい状況に追い込まれます。最悪の事態を避けるため、交渉を有利に進める方が賢明です。費用対効果が高いと理解しておくべきでしょう。

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