赤坂国際会計事務所

【2026年改正案】会社法中間試案たたき台の要点解説

2026.03.17UP!

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会社法制(株式・株主総会等関係)部会資料11「中間試案のたたき台」要約

本稿で扱うのは、法務省・法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会が取りまとめた「会社法(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案のたたき台」(全69ページ)です。

これはまだ「案の段階」であり、部会でのさらなる議論・パブリックコメントを経て、最終的な改正法案に反映される予定です。現時点ではA案/B案(あるいはα案/β案)が並列的に示されており、どの組み合わせが採用されるかは今後の審議次第です。

上場会社を主な対象に据えつつ、非上場会社にも配慮した設計となっており、実務の利便性向上・デジタル化・企業統治強化が全体の狙いです。

全体構成(目次ベース)

  • 第1部 株式の発行の在り方に関する規律の見直し(p.1〜12)
  • 第2部 株主総会の在り方に関する規律の見直し(p.13〜54)
  • 第3部 企業統治の在り方に関する規律及びその他の規律の見直し(p.55〜62)

第1部 株式発行規律の見直し:インセンティブとM&A

1. 使用人等向け株式無償交付の大幅柔軟化(上場会社中心)

会社の使用人(子会社役員・使用人を含む)への株式無償交付を、会社法に明文で位置づける方向です。

  • A案:取締役会決議のみでOK。有利発行規制は適用しつつ、法務省令で「対象範囲・上限・譲渡制限・労働基準法遵守宣言」などを定める。
  • B案:株主総会の普通決議を要件とし、有利発行規制は適用除外。

重要:本文柱書きで明確に「労働基準法上の『賃金』該当性について別途整理が必要」と記載されています。通貨払い原則・全額払い原則に抵触しない設計(給与減額なし・別規程化・補助的規模)が必須です。非上場会社については上場会社の枠組みを踏まえて「引き続き検討」とされており、現時点では上場会社向けの先行導入が想定されています。

現物出資構成や新株予約権行使時の無償化についても連動オプションが示されています。

2. 株式交付制度の拡張(上場・非上場共通)

子会社株式の追加取得を株式交付の対象に含める案が有力視されています。

  • A案:一般的に対象化
  • B案:株式交付計画に定めor一定割合(3分の2・10分の9・全部)までの取得に限定

持分会社・外国会社も対象に拡大。グループ再編やクロスボーダーM&Aで使いやすくなります。債権者保護手続は廃止方向(民法詐害行為取消請求で保護)も検討中です(現時点では選択肢の一つ)。

3. 現物出資制度の見直し(上場・非上場共通)

  • 検査役調査:株主総会特別決議で省略可(代わりに評価方法・評価額の説明義務)。
  • 不足額填補責任:現物出資者・取締役等・証明者の責任範囲を大幅に見直す複数案(通謀限定/無条件、責任内容は現金支払or株式無償譲渡請求など)。

第2部 株主総会規律

1. バーチャルオンリー株主総会(全株式会社対象・上場/非上場問わず)

場所の定めのない株主総会を正式制度化する方向です。

実施要件(現時点のたたき台)

  • 定款に「場所を定めない株主総会を開催できる」旨の定め(非上場でも必要)
  • リアルタイム双方向通信(インターネット)
  • デジタルデバイド対策(機器貸与・電話参加・書面行使・全員同意のいずれか)

手続・記録

  • 招集通知・議事録への追加記載
  • 通信記録の保存義務+株主閲覧権(期間は10年or短縮案で検討中)

セーフハーバールール:合理的な通信障害対策を講じ、故意・重過失がなく決議に影響しなければ取消事由とならない特則を設ける案が有力。ハイブリッド型や社債権者集会にも一部波及。非上場会社も含めて実務が変わる最大の論点です。

2. 実質株主確認制度(上場会社対象)

上場会社が名義株主(信託銀行・証券会社)に対し、直近仲介機関や指図権者(実質株主)情報を請求できる枠組み。仲介機関側に情報提供義務を課し、指図権者の代理出席・議決権行使を定款で一律禁止できなくする案も提示。大量保有報告制度との連携や議決権停止の設計が今後の焦点です。非上場会社には現時点で適用予定なし。アクティビスト関連では非常に重要な部分になります。

3. その他のデジタル化・合理化(上場・非上場共通)

  • 書面交付請求制度:廃止or維持の選択肢
  • 招集通知の電子メール活用拡大
  • 事前議決権行使と当日議決の関係整理、書面決議制度の見直し、株主提案権(要件・期限)の緩和など

第3部 企業統治・開示合理化

  • 指名委員会等設置会社:委員会と取締役会の権限配分見直し
  • 役員責任:責任限定枠組みの調整(優秀人材確保とのバランス)
  • 事業報告・有価証券報告書の重複整理(上場会社の開示コスト削減)

まとめ:まだ「たたき台」段階ですが、方向性は明確

この中間試案のたたき台は、

  1. 株式インセンティブの柔軟化(特に上場会社の使用人向け無償交付)
  2. 株主総会の完全オンライン化(全会社対象)
  3. 実質株主の透明化とガバナンス強化(上場会社中心)

という3本柱で、「実務で使いやすい会社法」と「株主保護・ガバナンスの実効性」を両立させようとしています。

まだ「案の段階」であり、労働基準法との調整、プライバシー配慮、過度な負担回避など、部会での最終調整が必要です。

実務対応のポイント

  • 上場会社:株式報酬・バーチャル総会・実質株主確認の準備を今から
  • 非上場会社:バーチャル総会と現物出資の見直しがメイン

本稿は部会資料11の全文に基づく要約です。最新動向は法務省サイトでご確認ください。

著者情報

赤坂国際法律会計事務所

弁護士 角田進二(Shinji SUMIDA)

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