赤坂国際会計事務所

売ろうとは思っていない。でも、このまま続けることに迷いがある経営者へ

2026.05.10UP!

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会社を手放す前に考えたい、承継・成長・M&Aという選択肢

「売る」なんて、考えたこともなかった

M&Aという言葉を聞いたとき、最初に浮かぶのは抵抗感かもしれない。

先代から引き継いだ会社を売るなんて、裏切りではないか。 社員に何と説明すればいいのか。 取引先はどう思うか。 「あの社長は逃げた」と思われないか。

そういう気持ちがあるなら、それは誠実さの証だ。 長年、会社と人を背負ってきた人間にしか持てない感覚だと思う。

この記事で伝えたいのは、「会社を売るべきだ」という話ではありません。 ただ、今まで言葉にできなかった迷いを、一度整理してみてもよいのではないか、ということです。

それでも、ふと迷いが生まれる瞬間がある

「売る気はない」と言いながら、それでも頭の片隅に引っかかるものがある経営者は、実は多い。

きっかけは、たいてい小さなことだ。

健康診断で、去年より数値が悪くなっていた。 子どもと話していて、継ぐつもりはないと遠回しに言われた。 幹部候補だと思っていた社員が、辞めてしまった。 同業の社長が大手グループに入ったと聞いた。 採用に出した求人に、誰も応募してこなかった。 深夜、一人で資金繰り表を眺めていた。 原材料費がまた上がった。価格転嫁できる限界が見えてきた。 DXに投資しなければと分かっているが、誰がどう進めるのか見当がつかない。

これらは「弱音」ではない。 経営の現実を正直に見ている人間にしか気づけないことだ。

この先5年、同じ重さを背負い続けられるか。

その問いが頭をよぎったなら、それはすでに、何かを考え始めているということだと思う。

何を、これ以上一人で背負い続けるべきではないのか

経営者が疲弊するのは、弱いからではない。 会社が成長したからこそ、一人では抱えきれない問題が生まれているのだ。

資金繰り、採用、労務、管理体制、DX投資、個人保証、後継者問題、大手との競争、制度対応。 これらを社長一人が全部担うことを、会社は本当に必要としているのか。

本当に継がせることが、家族の幸せなのか。

借入、連帯保証、労務責任、取引先との関係。 それを無理に引き継がせることが、果たして正解なのか。

「社長が一人で背負うこと」を自明とすることが、本当に会社のためになっているかどうか。 一度、問い直してみる価値がある。

託し方によっては、失うのではなく、残せるものがある

ここが、多くの経営者が誤解しているポイントだ。

第三者に引き継ぐ=手放す、ではない。

託し方によっては、むしろ「残せるもの」の方が多い。

従業員の雇用を残せる

廃業という選択肢と比べたとき、第三者承継は社員が働き続けられる環境を守る手段になる。 グループの力を借りることで、単独では提供できなかった福利厚生、教育機会、キャリアパスが生まれることもある。

自分が倒れたとき、社員の雇用は守れるか。

ブランドと技術を残せる

店名、商品名、地域での信用、職人の技術、製法、特許。 これらは、廃業すれば消える。 しかし、相手選びと条件設計を丁寧に行えば、廃業では消えてしまう価値を残せる可能性がある。

自分が退いた後も、この名前は残るか。

取引先との関係を残せる

長年の顧客、仕入先、地域のパートナー。 廃業なら断ち切られる関係も、承継なら続けることができる。

創業者の想いを残せる

単なる売却ではなく、会社の文化や理念を理解した相手に引き継ぐことができる。 それは「手放す」ではなく、「託す」という行為だ。

ここで一つ、押さえておきたいことがある。

一番高く買う相手と、一番大切にしてくれる相手は、同じとは限らない。

何を残したいかが明確になれば、どんな相手に託すべきかが見えてくる。 価格は判断基準の一つに過ぎない。

自社単独では届かない成長を、誰かと実現する

第三者承継は撤退ではなく、次の成長段階への移行でもある。

単独では難しかった設備投資、全国への販路拡大、海外展開、DX・AI導入、専門人材の採用。 パートナーの力を借りることで、自社だけでは10年かかることが、数年で実現することがある。

自社だけで、次の投資を本当にできるか。

「自分の会社を売る」ではなく、「自分の会社をより大きな舞台に移す」という視点で考えると、見え方が変わる。

原材料高、人手不足、制度対応に、単独で耐え続けられるか。

外部環境が厳しさを増す中で、一社で全てのリスクを吸収し続けることが、本当に会社のためになるのかどうか。

完全に去る必要はない。関わり方は設計できる

「引き継いだら、もう自分は会社に関われない」という思い込みがある。

しかしそれは、必ずしも正しくない。

承継後の関わり方は、相手選びや条件交渉によって変わる。

  • 一定期間、社長として続投する
  • 会長・顧問として会社を支える
  • 商品開発やブランド監修に関わり続ける
  • 少数株式を手元に残す
  • 段階的に引き継ぎ、急な断絶を避ける
  • 屋号・社名の維持を条件に入れる
  • 主要社員の雇用・処遇維持を確認する

もちろん、すべてが希望どおりになるわけではない。 ただし、これらは口約束ではなく、基本合意書、最終契約、雇用条件、役員・顧問契約、ブランド使用条件などの形で、どこまで確認し設計しておくかが重要になる。

だからこそ、価格だけでなく、どのような形で会社に関わり続けたいのかを、早い段階で整理しておく意味がある。

オーナー自身の人生設計として整理する

最後に、少しだけ個人の話をしたい。

長年、会社と社員と取引先の責任を背負ってきた。 個人保証、連帯保証、株式。それらは今、どういう状態にあるか。

健康リスク、相続、家族への負担。 もし今日、社長が突然倒れたとき、会社はどうなるか。

社長を降りた後、自分は何をしたいのか。

第二創業、投資、後進育成、地域貢献、家族との時間、健康の回復。 それらを考える余白が、今の生活にあるか。

長年の責任を整理し、次の役割を考えることは、逃げではない。 それは、経営者としての最後の仕事の一つだと思う。

まず考えるべきは、引き継ぐかどうかではなく、何を大切にしたいか

売るかどうかは、後で決めていい。

まず整理すべきことがある。

  • 自分は何を守りたいのか
  • 何を、これ以上一人で背負い続けるべきではないのか
  • 誰に託せば、納得できるのか
  • 承継後も関わり続けたいのか、距離を置きたいのか
  • 家族に、何を残したいのか

業績が悪くなってからでは、相手を選ぶ余裕がなくなる。

「まだ早い」という感覚は、多くの場合、正確ではない。 考え始めるのに、早すぎることはない。

M&Aは、会社を終わらせるための選択ではなく、会社・従業員・ブランド・技術を次の相手に引き継ぎ、オーナー自身の責任と人生設計を整理するための選択肢になり得ます。

当事務所の考え方

事業承継・M&Aは「売る・売らない」の二択ではなく、会社・従業員・ブランドをいかに次へ引き継ぐかを設計するプロセスと見ています。特に承継後の関与範囲や雇用・処遇の維持については、口約束ではなく契約でどこまで確認するかで結果が大きく変わるため、早めの整理をお勧めしています。

以下に1つでも該当する場合は、専門家への確認をお勧めします

  • 後継者について、家族と具体的に話したことがない
  • 個人保証・連帯保証の整理を、ずっと先送りにしている
  • 業績が落ちる前に動こうと思いながら、何も決めていない
  • 自分が倒れたとき、社員の雇用と取引先との関係を誰が守るか、イメージできていない

1つでも該当した方は、まずは「何を残したいか」だけご相談ください。

社長が突然倒れたとき、後継者も決まらず、個人保証の整理もされていないまま会社が立ち往生する。その瞬間、何年もかけて守ってきた社員の雇用と取引先との信頼が、選択肢のないまま失われていきます。

弁護士への相談は、問題が起きてから行くものだと思われがちです。しかし実際には、まだ何も決まっていない段階で「整理したいことがある」と話すだけで十分です。早い段階の相談ほど、選べる手段が多く残っています。

まずは「売るかどうかも、まだ決めていない」という状態のままで構いません。お問い合わせフォームからご相談ください。

著者情報

赤坂国際法律会計事務所

弁護士 角田進二(Shinji SUMIDA)

 

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