赤坂国際会計事務所

JPX公表の「不祥事予防ハンドブック」を基に、内部統制の形骸化を防ぎ企業価値を高める

2026.01.16UP!

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近年、不祥事による企業価値の毀損が相次いでいます。資本市場の健全な発展には、攻めのガバナンスを支える「守りの内部統制」が不可欠です。本記事では、東証(JPX)が公開した「不祥事予防ハンドブック」を基に、他社の失敗を自社の点検に活かすための着眼点を解説します。

1. 内部統制ハンドブックの核心:なぜ今「再発防止」なのか

【結論】 不祥事の原因を個人の資質に求めず、組織の「構造的欠陥」として捉え直すことが重要です。他社の再発防止策は、自社の脆弱性を点検するための「宝の山」であり、中長期的な企業価値を維持するためのリトマス試験紙となります。

取引所が強い危機感を抱いているのは、成長を急ぐ「攻めのガバナンス」の裏で、リスク管理という「守りの足場」が疎かになっている点です。特に【公益通報者保護法】の改正など、不祥事が発覚しやすい環境下では、形式的な規程整備ではなく「実効性」が問われます。

2. JPXが重視する「思考フレームワーク」と判断基準

【結論】 経営トップの姿勢(トーン・アット・ザ・トップ)を起点に、3ラインモデルによる権限分離と「バッド・ニュース・ファースト」の文化醸成を目指します。形式よりも「実際に機能しているか」を最優先の判断基準とします。

組織の健全性を保つためには、以下の3つの要素を物理的に排除・強化する必要があります。

  • 不正の機会を排除: 職務分離やシステムによるログチェックの徹底。
  • 3ラインの機能分担: 第1線(事業)と第2線(管理)の牽制、第3線(内部監査)の独立。
  • 悪い情報の共有: 悪い報告をした者を称賛する文化の明文化。

3. 原因別に見る再発防止のポイント(カード型レイアウト)

【結論】 14の原因別に策定された施策は、特定の人物への権限集中打破や、独立した「三様監査」の連携強化に集約されます。自社のフェーズ(中堅・新興など)に合わせて、これらの施策をカスタマイズして導入することが求められます。

① コンプライアンス意識の欠如

原因: 業績偏重の文化が不正を誘発する。

具体的施策:

  • ・社長と社員の双方向ミーティングの実施
  • ・階層別・テーマ別の継続的な倫理研修
  • ・評価項目にリスク管理への貢献度を導入

② 特定人物への権限集中

原因: 創業者や有力経営者の「内部統制の無視」が起きる。

具体的施策:

  • ・CEOとCOOの分離による相互牽制
  • ・ジョブ・ローテーション(原則5年上限)
  • ・社外取締役が議長を務める体制への変更

③ 内部監査・通報の形骸化

原因: 社内忖度により自浄作用が機能しない。

具体的施策:

  • ・デュアル・レポーティング・ラインの構築
  • ・第三者機関による外部通報窓口の設置
  • ・リニエンシー制度(自主申告による処分減免)

再発防止策は、不祥事対応の“後始末”ではありません。経営が自社のガバナンス構造を点検し、次の成長フェーズに耐えうる組織へ更新するための“投資判断”です。

多くの企業では、不祥事が起きると『規程を整備した』『研修を実施した』という“作業”に意識が向きがちですが、JPXのハンドブックが繰り返し強調しているのは、それらが実際に機能しているかという一点です。

とりわけ実務上、即効性のある打ち手は二つあります。
一つは、特定人物への権限集中を前提としない組織設計――CEOと業務執行の分離や、ジョブ・ローテーションによる属人化の排除です。
もう一つは、内部通報や内部監査に“外部の視点”を組み込むことです。第三者窓口やデュアル・レポーティングは、制度そのものよりも『経営が本気で悪い情報を受け取りに行く姿勢』を社内に示す効果があります。

再発防止策をどう設計したかは、取引所や投資家にとって、その企業が将来のリスクとどう向き合うかを測るリトマス試験紙になります。形式対応に留まるのか、それともガバナンスをアップデートする意思決定を行ったのか――その差は、中長期の企業価値に確実に表れます。

4. 実践への提言:外部の目と文書化の徹底

内部リソースが不足している場合でも、以下の3点は即座に実行すべきです。

  • 文書化: 属人化した業務フローを可視化し、不正の温床を排除する。
  • 外部の目: アドバイザーや会計監査人とのコミュニケーション頻度を高める。
  • 三様監査: 監査役、内部監査、会計監査人の3者が連携する定例会議を設置する。

 

 

著者

赤坂国際法律会計事務所
弁護士 角田進二(Shinji SUMIDA)

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